令和8年度税制改正大綱の実務ポイント|中小企業が今すぐ検討すべき対応策
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今回のテーマは、
『令和8年度税制改正大綱の実務ポイント|中小企業が今すぐ検討すべき対応策』です。
令和7年12月19日、与党より「令和8年度税制改正大綱」が公表されました。
今回の税制改正は、物価上昇や人手不足への対応、国内投資の促進を目的とした支援策が盛り込まれる一方、財源確保の観点から一部制度の見直し・縮小
も行われており、中小企業の経営判断に大きな影響を与える内容となっています。
まず注目されるのが、中小企業の少額減価償却資産の特例拡充です。
取得価額の要件が従来の「30万円未満」から「40万円未満」へ引き上げられ、適用期限も3年間延長されます。
設備更新やIT投資を検討する中小企業にとって、即時損金算入を活用しやすくなり、キャッシュフロー改善に資する改正といえます。
次に、研究開発税制の見直しです。
一般型の控除率や控除上限の見直しに加え、AI・量子・バイオといった国家戦略分野を対象とする「戦略技術領域型」が新設されました。
さらに中小企業については、赤字であっても活用可能な税額控除の3年間繰越制度が導入され、継続的な研究開発投資を後押しする内容となっています。
一方で、注意が必要なのが賃上げ促進税制の見直しです。
中小企業向け制度では、教育訓練費の増加に応じた上乗せ措置が廃止され、令和8年4月1日以後開始事業年度から適用されます。
これまで賃上げと研修投資を組み合わせて税額控除を受けていた企業は、今後の人件費戦略と税務上の影響を改めて検討する必要があります。
また、インボイス制度の見直しも実務への影響が大きい改正です。
インボイス制度の「2割特例」については、令和9年・10年の経過措置として、個人事業者に限り「3割特例」が認められる一方、法人は対象外となります。
さらに、免税事業者等からの仕入れに係る8割控除の特例については、適用期限が延長されるものの、控除割合は段階的に引き下げられ、
年間適用上限額も厳格化されます。取引先の課税区分によっては、消費税負担や取引条件の見直しが必要になる可能性があります。
加えて、相続対策を行った企業にとって重要なのが、貸付用不動産の評価方法の見直しです。
相続等の直前に取得した貸付用不動産について、市場価格と評価額の乖離を利用した節税スキームへの対応として、評価方法が厳格化されます。
不動産を活用した組織再編による株価対策を実施した場合や、将来的な事業承継・資産承継を見据える企業にとっては、早めの影響確認が不可欠です。
令和8年度税制改正は、「活用できる優遇制度を見極めつつ、見直し・縮小される制度への備えを進める」ことが求められる内容となっています。
自社の設備投資、研究開発、人件費、取引形態、資産保有の状況を総合的に整理し、今後の経営戦略に反映させていくことが重要といえるでしょう。
税制改正は単なる制度変更ではなく、国からのメッセージです。
その意図を読み取り、先手を打てるかどうかが、経営判断の質を左右します。
「自社が対象になるのか分からない」「今動くべきか判断したい」そのような段階でも、お気軽にご相談ください。
※本ページ、また本ページからリンクされるページに掲載された内容につきましては、「令和8年度税制改正大綱」に基づき、情報の提供を目的として、一般的な概要をまとめたものです。
そのため、今後国会に提出される予定の法案等を確認する必要があり、当該法案等において本資料に記載した内容とは異なる内容が制定される場合もありますのでご留意ください。
対策の立案・実行は専門家にもご相談のうえ、ご自身の責任において取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
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