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【予実管理】やり方と差異分析の計算例|スタートアップが試算表から始める予算と実績の比べ方・予実会議の回し方

公開日 更新日 経理スタートアップ
予実管理(予算と実績の比較)の進め方と、試算表の見方・差異分析を解説

予実管理を毎月の試算表から始める実務ガイド|試算表の見方、差異分析の計算例、予実会議の回し方

数多くのスタートアップの資金調達と月次決算を支援してきたプラスト税理士法人です。

「投資家に事業計画は出したけれど、毎月の実績と比べたことはない」
「試算表は届くけれど、どこを見ればいいのか分からない」

売上が立ち始め、採用や広告にお金を使う段階に入ると、計画どおりかを毎月確かめる「予実管理」が欠かせません。ただし税理士法人として忖度なしでお伝えすると、予実管理が回らない原因の多くは、表の作り方ではなく「月次の締めが遅いこと」と「予算が合計額だけで立てられていること」です。

本記事では、スタートアップ・成長中の中小企業の経営者や管理部門の責任者に向けて、試算表の見方、差異分析のやり方(計算例つき)、予実会議の回し方を解説します。ぜひ最後までご覧ください。

この記事の結論
• 予実管理とは、予算(計画の数字)と実績を毎月比べ、差が出た理由を確かめて次の打ち手を決める管理の方法です。
• 比べる数字は、試算表の損益計算書の部分です。損益の科目は期首(=事業年度の初め)からの累計で表示されることが多いため、当月(単月)と累計の両方で比べます。
• 予算を「顧客数×単価」のように分解して立てると、差異を数量と単価に分けて読めます(4章の計算例)。
• 試算表を翌月10〜15営業日以内(まずは翌月中)に確定し、予実会議で予算・実績・着地見込み(年度末の見込み)を並べます。

今月やること(5ステップ)
1. 会計ソフトから月次推移表を出す
2. 販管費を4〜6区分に束ねる
3. 売上を「数量×単価」で予算化する
4. 翌月10〜15営業日以内に予実表を更新して会議を開く
5. 予算・実績・見込みを並べて記録する

1. 予実管理とは?予算管理・前年同月比との違い

予実管理とは、期首に立てた予算(計画の数字)と毎月の実績を比べ、差(差異)が出た理由を確かめて、次の打ち手を決める管理の方法です。「予算実績管理」とも呼ばれます。決算書や税務申告のための会計(財務会計)に対して、社内の意思決定のための会計を管理会計といい、予実管理はその基本になります。

比べ方何と比べるか分かること
予実管理(予算比)期首に立てた予算計画どおりか、どの前提がずれたか
前年同月比前年の同じ月の実績季節による変動を除いた伸び
着地見込み(フォーキャスト)実績+残りの月の見込み年度末にどこで着地しそうか

予実管理は、予算を作り守らせる仕組み全体(予算管理)のうち「比べて直す」部分です。前年と事業の形が大きく変わるスタートアップでは、自分たちが立てた計画と比べて初めて「どの前提が外れたか」が分かります。

2. 試算表の見方|予実管理で使うのは損益計算書の部分

試算表とは、取引を勘定科目ごとに集計し、残高を一覧にした表です。前半が財産と借入などの状況(貸借対照表)、後半が期首から当月までのもうけ(損益計算書)で、予実管理で主に使う損益計算書の部分は、損益計算書の区分(会社計算規則88条〜94条)に沿って並んでいます。

区分計算予実管理で見るポイント
売上高—顧客数・単価などに分けて差の理由を確認する
売上原価—売上に連動する費用(仕入・外注費・サーバー費など)。売上に対する割合で見る
売上総利益(粗利)売上高−売上原価粗利率が計画どおりか
販売費及び一般管理費(販管費)—人件費・広告宣伝費・家賃などの内訳ごとに比べる
営業利益売上総利益−販管費本業のもうけ。予実管理の中心

この下に営業外損益・経常利益・特別損益・当期純利益が続きますが、予実管理では、まず営業利益まで見れば足ります。

見方のポイント① 損益の数字は「期首からの累計」で表示される

試算表の損益の残高は、通常、期首から当月末までの累計です。単月の数字は、当月の発生額(借方・貸方の差額)か、会計ソフトの「月次推移表」(各月の金額を横に並べた表)で取り出します。累計だけを比べると、どの月にずれたのかが分かりません。予実表は「当月」と「累計」を並べて作ります。

見方のポイント② 販管費は内訳を4〜6の「管理区分」にまとめる

販管費は合計では理由が分からず、全科目を並べると細かすぎます。打ち手が違うまとまりで、人件費(役員報酬・給料手当・賞与・法定福利費〈=会社負担の社会保険料〉)、採用費、広告宣伝費、外注費、固定費(地代家賃・ソフトウェア利用料など)、その他、のように束ねるのが実務的です。

見方のポイント③ 比べる前に、月次の計上ルールをそろえる

年払いの費用を一度に計上したり、未着の請求書の費用を翌月に回したりすると、差異の大半がタイミングのずれになります。予算と実績を同じルールで作ることが前提で、計上ルールの決め方は次の記事で解説しています。

参考記事:【月次決算の早期化】試算表が遅いスタートアップの4つのリスクと、翌月に締めるための改善ステップ

貸借対照表も毎月3つだけ見る

貸借対照表では、毎月、現預金・売掛金・未払金を確認します。売掛金が膨らんでいれば入金の遅れ、未払金の動きは費用の計上漏れに気づく手がかりです。仮払金・役員貸付金は次の記事をご覧ください。

参考記事:【銀行融資】審査で不利になる試算表とは?仮払金・役員貸付金など見直したい勘定科目と提出前の確認点

3. 予算の立て方|スタートアップは「売上の分解」と「採用計画」から

年間の目標を12で割っただけの予算では、差が出ても理由が分かりません。予算は「何が何件で、1件いくらか」という最小単位に分解して立てます。事業計画づくりから社外CFO(最高財務責任者)と一緒に進める方法もあります(経営コンサル(社外CFO))。

売上は「数量×単価」に分ける

事業の型売上の分解(例)予算で決める数字
SaaS・サブスクリプション(月額課金)課金顧客数×平均単価
(顧客数=前月末の顧客数+新規獲得−解約)
新規獲得数、解約数、平均単価
受託開発・コンサルティング案件数×平均単価
(または稼働人数×稼働率×単価)
受注件数、稼働率、単価
EC・店舗客数(訪問数×購入率)×客単価集客数、購入率、客単価

分解しておけば、差が出たときに「件数か単価か」をすぐに切り分けられます。年間の予算は、季節による変動などを踏まえて月ごとに配分します。

人件費は採用計画から積み上げる

人件費の予算は「誰を・何月に・いくらで採用するか」という採用計画をもとに、入社月から「月額給与×(1+法定福利費の割合)」を計上し、採用費を採用月に加えて積み上げます。役員報酬の水準の決め方は、次の記事で解説しています。

参考記事:【スタートアップ】役員報酬シミュレーション|社会保険料を抑え「手残り」を最大化する目安と決め方

広告費は「獲得件数×獲得単価」で決める

広告宣伝費は、新規獲得件数に1件あたりの獲得費用(獲得単価)を掛けて決めます。こうしておくと、実績で広告の効率が落ちたかどうかが分かります。なお、税金や社会保険料の納付月を含むお金の出入りの見通しは、バーンレートとランウェイの計算方法の記事で解説しています。

4. 差異分析のやり方|計算例で「数量」と「単価」に分ける

SaaS(月額課金のソフトウェア)のスタートアップの2026年9月の予実を、仮の数字で読んでみます(法定福利費は給与の15%と仮定)。

KPI(重要指標)予算実績
8月末の課金顧客数100社100社
9月の新規獲得/解約25社/5社15社/5社
9月の課金顧客数120社110社
平均月額単価50,000円52,000円
社員数(平均給与 月50万円)10名(9月に2名入社)9名(営業職1名の入社が10月にずれた)

差異は「実績−予算」で表示し、収益はプラスが有利、費用はプラスが不利(予算超過)です。

2026年9月(単月)予算実績差異(実績−予算)判定
売上高(顧客数×単価)6,000,0005,720,000−280,000不利
売上原価(サーバー費など)600,000580,000−20,000有利
売上総利益5,400,0005,140,000−260,000不利
人件費(給与+法定福利費)5,750,0005,175,000−575,000有利(採用の遅れ)
広告宣伝費1,000,0001,300,000+300,000不利
その他の販管費1,500,0001,550,000+50,000不利
販管費合計8,250,0008,025,000−225,000有利
営業利益−2,850,000−2,885,000−35,000不利

(人件費:予算10名×500,000円×1.15=5,750,000円、実績9名×500,000円×1.15=5,175,000円)

売上の差異を「数量」と「単価」に分ける
(1)顧客数の差による影響:(110社−120社)×予算の単価50,000円=−500,000円
(2)単価の差による影響:(52,000円−50,000円)×実績の顧客数110社=+220,000円
合計:−500,000円+220,000円=−280,000円(売上高の差異と一致)

営業利益の差は−35,000円で、合計だけなら「ほぼ予算どおり」です。しかし中身を分けると読み方が変わります。
• 売上:単価は上がった(+22万円)が、新規獲得が10社足りず−50万円
• 広告宣伝費:1社あたりの獲得費用が、予算40,000円(1,000,000円÷25社)に対し実績約86,667円(1,300,000円÷15社)と約2.2倍
• 人件費:−57.5万円は節約ではなく採用の遅れ。10月以降に後ろにずれるだけ

つまりこの月は、「広告の効率が落ちたが、採用の遅れで費用が浮き、たまたま利益が予算に近く見えた」月です。打ち手は、広告の経路ごとの獲得単価と、営業職の採用の遅れが新規獲得に与えた影響の確認になります。

どの差異を議論するか、基準を決めておく

すべての差異を説明しようとすると会議が終わりません。議論する差異の基準は、会社ごとに最初に決めておきます。たとえば「予算比±10%以上、かつ会社の規模に合わせて決めた金額以上(例:月の販管費の数%程度。小規模な会社なら10万円程度から)」です。上の例で金額の基準を10万円(月の販管費825万円の約1.2%)とすると、広告宣伝費(+30%・30万円)は議論し、その他の販管費(+3.3%・5万円)は報告だけにとどめます。差異は「一時的なもの(計上のずれ・季節要因)」と「続くもの(単価・解約率・獲得単価の変化)」に分け、続くものは着地見込みに反映します。

5. 予実会議の回し方|月次の締めから何営業日で開くか

数字が出てから会議までが遅いと「先月の反省会」で終わります。目安として、試算表を翌月10〜15営業日以内(まずは翌月中)に確定し、その数営業日後に予実会議を開く日程を組みます。

時期(目安)やること主な担当
月末経費精算・請求書などの提出期限全社
翌月10〜15営業日以内(まずは翌月中)試算表の確定経理・税理士
試算表の確定から1〜2営業日予実表の更新、差異の一次分析管理部門の責任者
試算表の確定から2〜5営業日予実会議(60分)経営陣・部門責任者
会議の翌営業日打ち手と見込みの共有、投資家への月次報告CEO(最高経営責任者)・CFO(最高財務責任者)

予実管理を回すには、まず月次の締めを早めることが先決です。締めの早期化は、記帳から請求・支払まで任せる経理BPO(経理アウトソーシング)で進める方法もあります。

60分の予実会議の進め方(例)

• ①KPIと売上(15分):顧客数・単価・新規獲得・解約の予実と理由
• ②費用(10分):基準を超えた差異だけ
• ③お金(5分):月末の現預金残高と、資金が尽きるまでの期間(ランウェイ)
• ④打ち手(20分):誰が・何を・いつまでに。前月の打ち手の結果も確認
• ⑤着地見込みの更新(10分)

予算そのものは期中に安易に書き換えず、見込みを毎月更新して「予算・実績・見込み」を並べると、どの前提が外れたかが記録に残ります。前提が大きく変わったときは予算を改訂し、改訂前の版も残します。

6. 投資家への月次報告と融資の説明に使う

投資家への月次報告

VC(ベンチャーキャピタル)から出資を受けると、投資契約などで毎月や四半期ごとの報告が定められていることがあります。まずは契約の報告条項を確認しましょう。予実表があれば、報告は「今月のハイライト」「KPIと損益の予実」「月末の現預金残高とランウェイ」「主な差異の理由と打ち手、着地見込み」を1〜2ページにまとめれば足ります。

ランウェイの計算方法は、次の記事で解説しています。予算を下回った月ほど早く、理由と打ち手をセットで伝えることが、次の資金調達での信頼につながります。

参考記事:【バーンレート・ランウェイ】計算方法と資金調達を始める時期の決め方|試算表の赤字と実際のキャッシュの違いまで税理士が解説

融資の相談・説明

予実表は、金融機関に事業計画の進み具合を示す資料になります。計画との差とその理由、今後の見込みを説明できると、融資の相談を進めやすくなります。経営者保証に関するガイドラインでも、事業計画や業績見通しに変動が生じたときは、自発的に報告するなど適時適切な情報開示に努めることが求められています(同ガイドライン4項(1)③)。

参考記事:【銀行融資】審査で不利になる試算表とは?仮払金・役員貸付金など見直したい勘定科目と提出前の確認点

7. Excelで始める予実管理表|最低限の列構成

予実管理は、専用のシステムがなくてもExcelの1シートで始められます。行は上からKPI、損益計算書の区分と販管費の管理区分、月末の現預金残高の順に並べ、列は次のとおりです。

列入れる内容ポイント
① 科目・KPI(必須)KPI、損益計算書の区分、販管費の管理区分会計ソフトの勘定科目との対応表を作る
② 当月予算(必須)期首に決めた月別の予算期中は上書きしない
③ 当月実績(必須)試算表の当月の発生額手入力せず、月次推移表から貼り付ける
④ 差異(必須)③−②計算式で自動計算する
⑤ 達成率(必須)③÷②費用は「予算の消化率」として読む
⑥ 累計予算・累計実績・累計差異(必須)期首から当月までの合計単月のぶれをならして見る
⑦ 着地見込み(推奨)累計実績+残りの月の見込み毎月の会議で更新する
⑧ 差異の理由と打ち手(必須)理由、打ち手、担当、期限基準を超えた差異だけ書く

8. まとめ|予実管理は「早い締め」と「分解した予算」から始める

あなたの会社の予算は、差が出たときに「件数か単価か」「一時的か続くものか」まで説明できる形になっていますか?

次のような場合は、予実管理の仕組みを見直す時期です。
• 試算表が出るのが翌月末より後になっている
• 予算が、年間の売上目標と費用の合計しかない
• 投資家や金融機関に計画と実績の差を聞かれて、すぐに答えられない

予実管理・月次決算の体制づくりなら、プラスト税理士法人へご相談ください

こんな経営者様はご相談ください。
• 月次の締めを早めて、予実会議を毎月回したい
• 売上を分解した予算と、Excelの予実表を作りたい

プラスト税理士法人は、月次決算から予算づくり、予実管理の仕組みづくりまでを一気通貫でご支援します。

よくある質問

●予実管理とは何ですか?
予算(計画の数字)と実績を毎月比べ、差が出た理由を確かめて次の打ち手を決める管理の方法です。「予算実績管理」とも呼ばれ、社内の意思決定のための会計(管理会計)の基本です。

●予実管理のやり方(手順)は?
①会計ソフトから月次推移表を出す、②販管費を4〜6区分に束ねる、③売上を「数量×単価」で予算化する、④翌月10〜15営業日以内に予実表を更新して会議を開く、⑤予算・実績・見込みを並べて記録する、の5ステップです。

●試算表のどこを見れば予算と実績を比べられますか?
損益計算書の部分(売上高から営業利益まで)を見ます。損益の残高は期首からの累計のことが多いため、月次推移表などで単月の数字を取り出し、累計とあわせて比べます。

●予算と実績の差はどのくらいなら問題ですか?
決まった基準はありません。「予算比±10%以上、かつ会社の規模に合わせて決めた金額以上(例:月の販管費の数%程度)」のように、議論する基準を会社ごとに最初に決めておき、基準を超えた差異を一時的なものか続くものかに分けて確認します。

●予実管理はいつから始めるべきですか?
売上が立ち、採用や広告にお金を使い始めた時期が目安です。前提として、試算表が翌月10〜15営業日以内(まずは翌月中)に出る体制が必要です。

【主な根拠法令等】会社計算規則88条~94条(損益計算書の区分)/経営者保証に関するガイドライン研究会「経営者保証に関するガイドライン」(平成25年12月)4項(1)③
※本記事は2026年10月20日時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。計算例の数値は説明のための仮の数字です。個別の事案への適用・最終判断は、担当税理士にご確認ください。

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