
バーンレート(1か月に減る現預金の額)とランウェイ(手元資金が何か月もつか)を月次の試算表から正しく出す方法|計算例と資金調達を始める時期の決め方
数多くのスタートアップの資金調達と月次決算を支援してきたプラスト税理士法人です。
「試算表の赤字は月800万円。手元に6,000万円あるから、あと7か月半はもつはず」
「次のラウンド(=次回の資金調達)の準備は、いつから始めればいいのだろう」
税理士法人として忖度なしでお伝えすると、試算表の赤字の額をそのままバーンレートにして、ランウェイを長く見積もっている会社は少なくありません。冒頭の例も、計算し直すとランウェイは約6.2か月でした(4章)。
本記事では、資金調達をしているスタートアップの経営者・CFO候補の方に向けて、バーンレートとランウェイの計算方法、試算表からの出し方、資金調達を始める時期の決め方を、日本の税金・社会保険料の納付時期による歪みも含めて解説します。ぜひ最後までご覧ください。
この記事の結論
• バーンレートとは、会社が1か月あたりに減らしている現預金の額です。ランウェイ(か月)は「現預金残高÷月間のネットバーンレート」で計算します。
• 試算表の赤字とバーンレートは一致しません。減価償却費を足し戻し、前受金・賞与・税金・社会保険料・借入金の返済などを加えて、6〜12か月の平均で見ます。
• まず直近6か月の月初・月末の現預金残高と、増資・借入による入金額を並べて計算します(3章の手順)。
• 資金調達を始める時期に一律の正解はありません。ランウェイが「準備+交渉から入金まで+不調時の代替策が効くまで+余裕」の月数を下回る前に動き始めます。
1. バーンレートとランウェイとは?計算式と基本の考え方
バーンレート(Burn Rate)とは、会社が1か月あたりに減らしている現預金の額のことで、「資金燃焼率」とも呼ばれます。ランウェイ(Runway)とは、今の手元資金で事業を続けられる残りの月数です。
| 指標 | 計算式 | 何がわかるか |
|---|---|---|
| グロスバーンレート | 1か月の現金支出の合計 | 支出の規模 |
| ネットバーンレート | 1か月の現金支出-現金収入(増資・借入による入金は除く) | 手元資金が実際に減る速さ |
| ランウェイ | 現預金残高÷月間のネットバーンレート | 資金が尽きるまでの残り月数 |
ランウェイには原則としてネットバーンレートを使います(売上がない会社ではグロスと同額)。グロスバーンレートは、支出の見直しや「売上の入金が止まっても何か月もつか(現預金÷グロスバーン)」の確認に使います。
式は単純ですが、分母のバーンレートを何から計算するかで、結果が大きく変わります。
2. 会計上の赤字とバーンレートがずれる6つの要因
試算表(=毎月の損益と財産の状況をまとめた表)は売上・費用を「発生した月」に、バーンレートは「現金が動いた月」で見ます。ずれの主な要因は次の6つです。
要因① 減価償却費(現金が出ない費用)
設備の代金は買った月に払い、費用は数年に分けて計上します。減価償却費は足し戻し、設備や敷金を払った月の支出は別に把握します。
要因② 前受金・売掛金(売上と入金のずれ)
年払い契約で代金を先に受け取ると、入金月に現預金が大きく増え、その後は前受金の取崩し(=先に受け取った代金を、提供した月の売上に振り替えること)で売上だけが計上されます。年払いの入金があった月だけを見ると、バーンレートを小さく見誤ります。
要因③ 賞与・税金・社会保険料の支払いが集中する月
社会保険料は翌月末、源泉所得税・住民税は原則翌月10日に毎月納めますが、次の月は支払いが集中します。
| 支払い | 支払いが集中する時期 |
|---|---|
| 賞与と、賞与にかかる社会保険料 | 賞与の月と、その翌月末 |
| 源泉所得税(納期の特例を受けている場合) | 7月10日と翌年1月20日に半年分ずつ |
| 住民税(特別徴収の納期の特例を受けている場合) | 6月10日と12月10日に半年分ずつ |
| 労働保険料(年度更新) | 6月1日〜7月10日(一定額以上なら3回に分けて納める延納も可能) |
要因④ 消費税(税抜の試算表と、税込の支払い)
税抜経理(=消費税を売上・費用と別に管理する方法)の試算表に消費税は入りませんが、支払いは税込です。支払った消費税(給与にはかかりません)が受け取った消費税を上回ると、原則課税(一般課税)で計算している場合に差額が還付されます(簡易課税では還付は受けられません。消費税法37条)。還付は課税期間後の確定申告を経て受けるため、それまでは立替えです。課税期間を3か月・1か月に短くする特例で還付は早まりますが、選ぶと原則2年間やめられません(消費税法19条1項3号〜4号の2・5項)。
参考記事:【創業1期目】消費税還付を受ける条件と期限|課税事業者選択・インボイス登録と2年縛り
要因⑤ 借入金の返済(費用ではないが現金が出る)
元金の返済は損益に出ませんが、バーンレートに含めます。据置期間(=元金の返済が始まるまでの猶予期間)が終わると一段上がります。
要因⑥ 赤字でもかかる税金と、黒字化後の納税
赤字の間も法人住民税の均等割は毎年納めます。資本金が1億円を超えると、赤字でも外形標準課税(法人事業税)がかかります。黒字化した後は、法人税などを原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内にまとめて納めます。
3. バーンレートの計算方法|月次の試算表から出す5ステップ
貸借対照表(=月末時点の財産と借入の一覧)の現預金の増減から出し、損益計算書でずれの理由を確かめるのが確実です。
ステップ① 月次決算を締め、預金残高を照合する
会計ソフトの預金残高を、通帳・ネットバンキングの残高と照合します。
ステップ② 現預金の増減から、実績のネットバーンレートを出す
ネットバーンレート=月初の現預金-月末の現預金+当月の増資・借入による入金額
調達による入金は足し戻して除き、借入金の返済は除かずに含めます。
ステップ③ 6〜12か月の平均をとる
賞与などの月は大きくぶれるため、直近6か月(年1回の支払いまで反映させるなら12か月)の平均で見ます。
ステップ④ 次の勘定で、損益とのずれを説明できるようにする
| 見る勘定科目 | 確認すること |
|---|---|
| 現金・預金 | 月初と月末の残高の差(計算の出発点) |
| 資本金・資本準備金、借入金 | 増資・新規借入の入金(除く)と、元金の返済(含める) |
| 前受金・売掛金 | 年払いの入金、入金待ちの売上 |
| 未払金・未払費用・買掛金 | カード利用の翌月引落し、賞与の未払など |
| 預り金 | 納期の特例でまとめて出ていく源泉所得税・住民税 |
| 仮払消費税・仮受消費税 | 申告後の納付・還付の見込み |
| 減価償却費・固定資産 | 現金が出ない費用(足し戻す)と、設備投資の支出 |
ステップ⑤ 今後の計画を織り込んだ「見込みのバーンレート」でランウェイを出す
採用・返済開始などを織り込んだ資金繰り表(=今後の入金と支払いの予定表)で、現預金が尽きる月を確かめます。
参考記事:【月次決算の早期化】試算表が遅いスタートアップの4つのリスクと、翌月に締めるための改善ステップ
4. 計算例|試算表の赤字は月800万円、実際のバーンレートは?
次の条件で計算します(金額は仮の数字です)。試算表の営業損失は500万円-1,300万円=△800万円です。
| 前提 | 内容 |
|---|---|
| 現預金残高 | 6,000万円 |
| 毎月の売上(税抜) | 500万円(うち150万円は、年払い契約で受取り済みの前受金の取崩し。当月の入金なし) |
| 毎月の費用(税抜) | 1,300万円(人件費700万円、外注費200万円、広告宣伝費200万円、地代家賃100万円、減価償却費100万円) |
| 借入金の元金返済 | 毎月50万円 |
| 賞与 | 6月・12月の年2回。賞与と会社負担の社会保険料などで1回400万円(毎月の試算表には計上していない) |
※簡略化のため、賞与に伴う社会保険料・源泉所得税も賞与の月に支払うものとし、営業損失△800万円は賞与を除く通常の月の金額とします。
※ランウェイの期間中に、年払い契約の更新による入金はないものとします。
※支払利息と消費税は、説明を簡単にするため省略しています。
※賞与を月割りで費用計上している会社では、(5)の調整は不要です。
月間ネットバーンレートの計算(損益から調整する方法)
(1)試算表の営業損失:800万円
(2)減価償却費を足し戻す:-100万円
(3)前受金の取崩し分は入金がないので加える:+150万円
(4)借入金の元金返済を加える:+50万円
(5)賞与の月割りを加える:400万円×2回÷12か月=66.66…万円→約66.7万円
合計:800万円-100万円+150万円+50万円+66.7万円=約966.7万円(月額)
ランウェイの計算
• 試算表の赤字で計算した場合:6,000万円÷800万円=7.5か月
• 実際のネットバーンで計算した場合:6,000万円÷966.7万円=6.20…→約6.2か月
赤字の額をそのまま使うと、資金が尽きる時期を約1.3か月遅く見積もることになります。
現預金の増減(3章の方法)で検算する
賞与のない月の現預金の減少は、現金支出1,200万円(1,300万円-減価償却費100万円)+元金返済50万円-現金収入350万円(500万円-150万円)=900万円、賞与の月は900万円+400万円=1,300万円です。6か月平均は(900万円×5+1,300万円)÷6=966.66…万円で、上の額と一致します。1か月だけを見ると900万円にも1,300万円にもなるため、平均で見ることが大切です。
グロスバーンレートは1,200万円+50万円+約66.7万円=約1,316.7万円で、売上の入金が止まるとランウェイは6,000万円÷1,316.7万円=約4.6か月に縮みます。
5. スタートアップのランウェイは何か月必要?資金調達を始める時期の決め方
資金調達を始める時期に、すべての会社に当てはまる基準はありません。そこで、自社に必要な月数を、次の4つの期間の合計として見積もる考え方をおすすめします。
| 期間 | 内容 |
|---|---|
| ① 準備の期間 | 事業計画・資本政策・投資家向け資料、月次の数字の整備 |
| ② 交渉から入金までの期間 | 面談、条件交渉、投資契約、株主総会、払込み |
| ③ 不調時の代替策が効くまでの期間 | 融資の審査、支出の削減 |
| ④ 余裕 | 交渉の長期化や、計画との差に備える期間 |
見込みのランウェイが①〜④の合計を下回る前に動き始めます。仮に①2か月+②4か月+③3か月+④3か月=12か月と見込むなら、ランウェイが12か月を切る前に準備を始めます(各期間は会社・市況で大きく異なります)。計算例の会社(約6.2か月)は、調達と並行して融資や支出の見直しを急ぐ段階です。
Y Combinator(=米国のアクセラレーター)の共同創業者ポール・グレアム氏は、「今のままで手元資金が尽きる前に黒字化できるか」を問う考え方(default alive)を示しています。同社は2022年5月、景気の悪化を受けて出資先に「24か月、追加の資金調達ができなくても存続できる備え」を促したと報じられました(TechCrunch)。市況が厳しいほど、②と④は長めに見込みます。
調達額は、調達後のランウェイが次のマイルストーン(=次の調達に必要な成果)の達成と次の調達の①〜④を満たすかで決めます。持株比率との兼ね合いは、資本政策表の作り方と持株比率・希薄化の計算例で解説しています。
6. 資金調達以外の手当て|融資・支出の見直しなどの比較
ランウェイを延ばす方法は増資だけではありません。
| 手当て | ランウェイへの効き方 | 効果が出るまで | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 融資(日本政策金融公庫、信用保証協会の保証付きの銀行融資、ベンチャーデットなど) | 株式を手放さずに現預金を増やす | 審査の期間が必要 | 返済でバーンレートが上がる。ベンチャーデットは新株予約権や財務制限条項(=財務数値を守る約束)がつくことがある |
| 支出の見直し(採用時期の後ろ倒し、広告の効率化、外注・ツールの整理) | グロスバーンレートを下げる | 早いものは翌月から | 解約予告期間の縛り。成長の鈍化 |
| 入金の前倒し・支払条件の見直し(年払い、前受け、支払サイト〈=締め日から支払日までの期間〉) | 一時的に現預金を厚くする | 契約・更新のタイミング | 将来の入金の先取りになる |
| 補助金・助成金 | 対象経費の一部を補う | 多くは事業の実施後に支払い(精算払い) | つなぎ資金になりにくい |
融資は余裕のあるうちに相談する方が選択肢が広がり、赤字の会社ほど直近の試算表で数字を説明できることが審査の土台になります。
参考記事:【銀行融資】審査で不利になる試算表とは?仮払金・役員貸付金など見直したい勘定科目と提出前の確認点
7. まとめ|バーンレートは「早く正確な月次の数字」から
あなたの会社のランウェイは、実際の現預金の減り方で計算できていますか?
次のような場合は、一度計算を見直すことをおすすめします。
• 試算表の営業損失をそのままバーンレートとして使っている
• 年払いの入金や賞与の月など、1か月だけの数字でランウェイを出している
• 試算表が締まるのが翌々月以降で、バーンレートが数か月前の数字になっている
参考記事(予算と比べて経営判断に使う方法):【予実管理】やり方と差異分析の計算例|スタートアップが試算表から始める予算と実績の比べ方・予実会議の回し方
バーンレートの把握と資金計画なら、プラスト税理士法人へご相談ください
こんな経営者様・CFOの方はご相談ください。
• バーンレートとランウェイを正確に早く把握したい
• 次の資金調達に向けて資金繰り表と資本政策を整えたい
• 増資・融資・支出の見直しのどれから手を付けるか相談したい
プラスト税理士法人は、月次決算の早期化から資金繰り表、資本政策・増資・融資の準備までをご支援します。
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よくある質問
●バーンレートとは何ですか?
会社が1か月あたりに減らしている現預金の額で、「資金燃焼率」とも呼ばれます。手元資金が減る速さを表す指標です。
●バーンレートの計算方法は?
ネットバーンレート=月初の現預金-月末の現預金+当月の増資・借入による入金額で計算します。本記事の計算例では、賞与のない月は900万円、賞与の月は1,300万円で、6か月平均は約966.7万円です。
●グロスバーンレートとネットバーンレートの違いは何ですか?
グロスは1か月の現金支出の合計、ネットは現金支出から現金収入(増資・借入による入金を除く)を引いた額です。ランウェイには原則としてネットを使います。
●ランウェイの計算方法を教えてください。
ランウェイ(か月)=現預金残高÷月間のネットバーンレートです。現預金6,000万円、ネットバーンレート月966.7万円なら約6.2か月です。
●試算表の赤字の額を、そのままバーンレートにしてよいですか?
おすすめしません。減価償却費を足し戻し、前受金の取崩し、借入金の元金返済、賞与や税金・社会保険料のまとめ払いなど現金だけが動くものを加える必要があります。
●ランウェイが何か月を切ったら資金調達を始めるべきですか?
一律の基準はありません。「準備+交渉から入金まで+不調時の代替策が効くまで+余裕」を自社の見込みで合計し、ランウェイがそれを下回る前に動くのが一つの考え方です(本文の例では2+4+3+3=12か月)。景気の悪化局面では、Y Combinatorが2022年に24か月の備えを促したと報じられており(TechCrunch、2022年5月19日)、より長めに見込むことも考えられます。
●消費税の還付は、ランウェイの計算に入れてよいですか?
還付を受けられるのは原則課税(一般課税)の場合だけで、簡易課税では受けられません。還付は課税期間が終わった後の確定申告を経て入金されます(消費税法45条1項・52条1項)。金額と時期は別枠で管理し、ランウェイは還付を除いた数字でも確認しておくと安心です。
【主な根拠法令等・参考資料】消費税法19条1項3号〜4号の2・5項/消費税法37条・45条1項・52条1項/法人税法74条1項・77条/地方税法52条・53条・72条の2・72条の25・312条・321条の5・321条の5の2・321条の8/所得税法183条1項・216条/国税庁タックスアンサーNo.2505「源泉所得税の納期の特例」(令和8年4月1日現在)/健康保険法164条1項/厚生年金保険法83条1項/労働保険の保険料の徴収等に関する法律15条1項・18条・19条1項/Paul Graham "Default Alive or Default Dead?"(2015年10月)/TechCrunch(2022年5月19日、Y Combinatorの助言の報道)
※本記事は2026年10月20日時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。資金調達の時期・手段の判断は、事業の状況・市況・投資家により異なります。個別の事案への適用・最終判断は、担当税理士にご確認ください。
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