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類似業種比準価額の計算方法|計算式・比準要素の求め方・株価Aと業種目の選び方を計算例で解説

公開日 更新日 事業承継・相続
株価チャートと株価の一覧が載った新聞(類似業種比準価額で、上場会社の業種目別株価と比べて自社株を評価するイメージ)

財産評価基本通達180〜184と国税庁の令和8年分データで、類似業種比準価額の計算を計算例つきで解説します

オーナー企業の事業承継・株価算定を支援しているプラスト税理士法人です。

「類似業種比準価額って、結局どうやって計算するの?」
「決算書と申告書の、どの数字を使えばいいの?」

税理士法人として忖度なしでお伝えすると、類似業種比準価額は、決算書・法人税申告書と国税庁の公表データがあれば、誰でも同じ手順で計算できます。ただし、業種目・株価・利益の期間の「選び方」で、評価額が1割以上動くこともあります。

本記事では、自社株の評価を確認したいオーナー経営者・経理担当者と、評価明細書を作成する会計事務所の方に向けて、評価明細書の第4表の順番に沿って、令和8年分の業種目別株価を使った計算例で類似業種比準価額の計算を解説します。株主区分や会社規模の判定は非上場株式(取引相場のない株式)の評価方法|同族株主・会社規模の判定から評価方式が決まる4ステップに譲り、本記事は計算に絞ります。最後まで読めば、自社の数字で試算する手順がそろいます。

この記事の結論(2026年10月26日時点)
• 類似業種比準価額とは、評価会社と同じ業種の上場会社の株価(株価A)に、配当・利益・簿価純資産の3つを比べた割合(比準割合)と、会社規模に応じた割引(大会社0.7・中会社0.6・小会社0.5)を掛けて求める、非上場株式の評価額です(財産評価基本通達180)。
• 計算式はA×{(Ⓑ/B+Ⓒ/C+Ⓓ/D)÷3}×しんしゃく割合(=評価の安全性を考えた割引)です。Ⓑ(配当)・Ⓒ(利益)・Ⓓ(簿価純資産)は1株当たりの資本金等の額(=株主が払い込んだ元手にあたる税務上の金額)を50円とした株数で計算し、最後に「1株当たりの資本金等の額÷50円」を掛けて実際の1株に戻します。
• 株価Aは、課税時期(=相続の場合は亡くなった日、贈与の場合は贈与で取得した日)の月以前3か月・前年平均・課税時期の属する月以前2年間の平均のうち最も低いものを使えます(同182)。業種目は、判定した業種目とその1つ上の分類のうち低い方を選べます(同181)。数字は国税庁の「令和8年分の類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について」で確認します。
• 令和8年分のデータを使った当法人の計算例では、類似業種比準価額は1株5,473円、中会社(Lの割合〈=類似業種比準価額を使う割合〉0.90)の評価額は7,125円で、純資産価額22,000円の約3分の1になりました。
• 類似業種比準方式は、国税庁の有識者会議で廃止の方向(存置は困難ではないかとの案)が示されていますが、検討段階の案で確定していません。現行ルールでの計算は、引き続き必要です。

1. 類似業種比準価額とは?どの会社の評価に使うのか

類似業種比準価額とは、評価会社と同じ業種の上場会社の株価(株価A)に、配当・利益・簿価純資産の3つを比べた割合(比準割合)と、会社規模に応じた割引(大会社0.7・中会社0.6・小会社0.5)を掛けて求める、非上場株式の評価額です(財産評価基本通達180)。この計算方法を類似業種比準方式といいます。

相続や贈与で自社株を取得した同族株主等(=会社を支配する株主グループ)は、会社の規模に応じて次のように類似業種比準価額を使います(同179)。

会社規模原則の評価方法納税者が選べる方法
大会社類似業種比準価額純資産価額(相続税評価額)
中会社類似業種比準価額×L+純資産価額×(1−L)の併用方式。L(=類似業種比準価額を使う割合)は0.90・0.75・0.60算式中の類似業種比準価額を純資産価額に置き換え
小会社純資産価額Lを0.50とした併用方式

同族株主以外の株主が取得した株式は、原則として配当還元方式で評価します。開業後3年未満の会社などの「特定の評価会社」は、原則として純資産価額方式で評価します(同178・188・189)。ただし、比準要素数1の会社が選択できる併用方式や、株式等保有特定会社のS1の金額では、類似業種比準価額を一部使います。

参考記事:配当還元方式とは?使える株主の判定と計算式・計算例|従業員持株会・少数株主との売買での注意点

2. 類似業種比準価額の計算式|A×比準割合×しんしゃく割合

財産評価基本通達180と、国税庁の「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」の記載方法等(令和8年4月1日以降用)によると、計算式は次のとおりです。

1株(50円)当たりの比準価額 = A ×{(Ⓑ/B + Ⓒ/C + Ⓓ/D)÷ 3}× しんしゃく割合
類似業種比準価額 = 1株(50円)当たりの比準価額 ×(1株当たりの資本金等の額 ÷ 50円)

記号意味どこから取るか
A類似業種の株価国税庁の業種目別株価等(同182)
Ⓑ・Ⓒ・Ⓓ評価会社の1株(50円)当たりの配当金額・利益金額・純資産価額(帳簿価額)自社の決算書・法人税申告書(同183)
B・C・D類似業種の1株(50円)当たりの配当金額・年利益金額・純資産価額国税庁の業種目別株価等(同183-2)
しんしゃく割合評価の安全性を考えた割引。大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5同180(2)

Ⓑ/B などの3つの割合を「要素別比準割合」、その平均を「比準割合」といいます。配当・利益・純資産の3つは同じ重みで、単純に3で割ります。評価明細書では、Ⓑは10銭未満、Ⓒ・Ⓓは円未満、要素別比準割合と比準割合は小数点以下2位未満、1株(50円)当たりの比準価額は10銭未満を切り捨てます(記載方法等・評価明細書第4表)。

「1株当たりの資本金等の額50円」への換算と、最後の割り戻し

類似業種の株価やB・C・Dは、上場会社の1株当たりの資本金の額等を50円とした金額で公表されています(同182・183-2)。そこで評価会社の側も、同じ物差しにそろえてから比べます。

• 手順①:直前期末(=課税時期の直前に終了した事業年度の末日)の資本金等の額(法人税申告書の別表五(一)の「差引翌期首現在資本金等の額」の差引合計額)を50円で割り、「50円換算の株数」を出します(同183(1))。
• 手順②:配当・利益・純資産を、この50円換算の株数で割ってⒷ・Ⓒ・Ⓓを出します。
• 手順③:計算式で1株(50円)当たりの比準価額を出し、最後に「1株当たりの資本金等の額÷50円」を掛けて、実際の1株の価額に戻します(同180)。

たとえば資本金等の額1,000万円・発行済株式数2万株の会社は、1株当たりの資本金等の額が500円です。50円換算の株数は20万株(=1,000万円÷50円)、最後に掛ける倍数は10倍(=500円÷50円)になります。発行済株式数は、自己株式を除いた数で数えます(同180)。

3. 比準要素Ⓑ・Ⓒ・Ⓓの求め方|配当・利益・簿価純資産

3つの比準要素は、すべて直前期末を基準に計算します(同183)。

比準要素使う数字と期間除くもの・加えるもの
Ⓑ 配当直前期末以前2年間の剰余金の配当の合計÷2。各事業年度中に効力が発生した配当で数える特別配当・記念配当など将来毎期続くと見込めない配当と、資本金等の額の減少による配当(資本の払戻し)は除く
Ⓒ 利益直前期1年間の法人税の課税所得金額。納税者の選択で直前2年間の平均も使える固定資産売却益・保険差益などの非経常的な利益を除き、益金不算入(=税務上の収益に含めないこと)とした受取配当等(所得税額相当を除く)と、損金算入した繰越欠損金の控除額を加える。マイナスなら0
Ⓓ 簿価純資産直前期末の資本金等の額+利益積立金額(=税務上の利益の蓄積額。別表五(一)の差引翌期首現在利益積立金額の差引合計額)利益積立金額がマイナスなら資本金等の額から差し引き、それでもマイナスなら0

実務で押さえておきたいポイントは次のとおりです。
• 無配の会社はⒷが0になります。それでも比準割合は3で割るため、配当のない会社ほど比準割合が小さくなります(第8章で解説します)。
• Ⓒは直前期と2年平均の低い方を選べます。役員退職金を支払った期などで利益が大きく下がった年は、どちらが有利かを必ず比べます。
• 非経常的な利益は、非経常的な損失と差し引きした金額(マイナスなら0)を除きます(記載方法等 第4表の1)。
• 事業年度が1年未満の期がある場合は、直前期末以前1年間に対応する期間で計算し、利益は月数であん分します(同)。
• 数字の出どころは、主に法人税申告書の別表四(所得の計算)、別表五(一)(利益積立金額と資本金等の額)と、受取配当等の益金不算入・繰越欠損金の明細です。

なお、比べる相手の類似業種のB・C・Dは、標本会社(=業種目ごとに選ばれた上場会社)の財務諸表(連結財務諸表があれば連結)から計算されており、利益Cは「税引前当期純利益」、純資産Dは「純資産の部」の金額です(同183-2)。評価会社は税務上の数字、類似業種は会計上の数字で比べている点は、知っておくとよいでしょう。

4. 業種目別株価(国税庁)の見方と、株価A・業種目の選び方

株価AとB・C・Dは、国税庁が年分ごとに公表する「令和8年分の類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について」で確認します。令和8年分は2026年6月5日付の通達で定められ、その後の改正で月ごとの株価が追加されています(2026年10月8日付の改正で8月分まで掲載)。通達のページでは業種目ごとのPDF(一括ダウンロードも可)を開けるほか、同じページの「(参考)業種目別株価等一覧表」から2か月分ずつの一覧も確認できます。前年11月・12月分の株価も載っており、1月・2月が課税時期のときの「前月・前々月」に使います。

株価Aは「5つの候補のうち最も低いもの」

株価Aは、原則として課税時期の属する月以前3か月間の各月の株価のうち最も低いものです。ただし、納税者の選択で、前年平均株価や課税時期の属する月以前2年間の平均株価も使えます(同182)。つまり5つの候補から最も低いものを選べます。令和8年分の公表データから、建設業の2つの業種目を例に、2026年8月が課税時期の場合を並べます(単位:円。太字が最も低い株価)。

業種目8月(課税時期の月)7月(前月)6月(前々月)令和7年平均課税時期の属する月以前2年間の平均
No.2 総合工事業(中分類)618622607543570
No.4 その他の総合工事業(小分類)565568554488515

この例では、どちらも前年平均が最も低くなりました。株価が上がっている局面では前年平均や2年平均が、下がっている局面では直近の月が低くなりやすいため、毎回5つを並べて確認します。

業種目は「取引金額」で判定し、1つ上の分類も選べる

業種目は、国税庁が大分類・中分類・小分類に区分して定めたもので、自社の事業がどれに当たるかは、国税庁が公表している日本標準産業分類との対比表などで確認します。評価会社の業種目は、直前期末以前1年間の取引金額(売上高)で判定し、複数の事業がある場合は取引金額の割合が50%を超える業種目とします(同181-2)。50%を超える業種目がない場合は、通達に定めた順序で「その他の○○業」や上の分類に当てはめます。

そのうえで、判定した業種目と、その1つ上の分類(小分類なら中分類、中分類なら大分類)のうち低い方を選べます(同181)。評価明細書でも、2つの業種目でそれぞれ比準価額を計算し、低い方を採用する様式になっています。

※直前期末の翌日から課税時期までに配当の効力が発生した場合や、株式の割当て等の効力が発生した場合は、計算した類似業種比準価額を修正します(同184)。

5. 計算例|令和8年分のデータで類似業種比準価額を計算する

令和8年分の公表データを使い、次の会社の類似業種比準価額を計算します。会社の数字は説明のための仮のものです。

項目前提
事業・規模土木工事業(No.4 その他の総合工事業)。総資産(帳簿価額)8億円、従業員40人、取引金額12億円の中会社(Lの割合0.90)
課税時期・直前期末2026年8月に贈与。直前期末は2026年3月末。直前期末の翌日から課税時期までの間に、配当・株式の割当て等の効力は発生していないものとします(発生した場合は同184により修正します)
株式資本金等の額1,000万円、発行済株式数2万株(1株当たりの資本金等の額500円)
配当直前期300万円、直前々期500万円(うち200万円は創業記念配当)
利益(課税所得)直前期3,000万円(うち固定資産売却益800万円)、直前々期2,600万円。受取配当等の益金不算入額・繰越欠損金の控除額はなし
簿価純資産資本金等の額1,000万円+利益積立金額2億9,000万円=3億円

ステップ1:50円換算の株数と比準要素

• 50円換算の株数:1,000万円÷50円=20万株
• Ⓑ配当:記念配当200万円を除き、(300万円+300万円)÷2=300万円。300万円÷20万株=15.0円
• Ⓒ利益:直前期は3,000万円−800万円=2,200万円、2年平均は(2,200万円+2,600万円)÷2=2,400万円。低い直前期を選び、2,200万円÷20万株=110円
• Ⓓ純資産:3億円÷20万株=1,500円

ステップ2:2つの業種目で比準価額を計算する

計算No.4(小分類)No.2(中分類)
B・C・D(公表値)12.9・56・55414.6・71・600
Ⓑ/B15.0÷12.9=1.1615.0÷14.6=1.02
Ⓒ/C110÷56=1.96110÷71=1.54
Ⓓ/D1,500÷554=2.701,500÷600=2.50
比準割合(÷3)5.82÷3=1.945.06÷3=1.68
株価A488円543円
1株(50円)当たりの比準価額(×0.6)488×1.94×0.6=568.0円543×1.68×0.6=547.3円

ステップ3:低い方を選び、実際の1株に戻す

低い方の547.3円(No.2 総合工事業)を採用し、1株当たりの資本金等の額の倍数を掛けます。
類似業種比準価額 = 547.3円 ×(500円÷50円)= 5,473円

No.4を使った場合は568.0円×10=5,680円なので、業種目の選択だけで1株207円、2万株で414万円の差が出ています。

選択を使うかどうかで、評価額はどれだけ変わるか

ケース業種目株価A利益Ⓒ比準割合類似業種比準価額
選択をすべて使うNo.2(中分類)543円(前年平均)110円(直前期)1.685,473円
株価Aは3か月だけ、利益は不利な2年平均、業種目は小分類No.4(小分類)554円(6月)120円(2年平均)2.006,648円

2つ目のケースは、554×2.00×0.6=664.8円×10=6,648円です。差は1株1,175円、2万株で2,350万円になります。参考までに、業種目・株価A・利益をすべて原則どおり(小分類・3か月・直前期)にすると、554×1.94×0.6=644.8円×10=6,448円で、約18%高くなります。通達が認める選択肢は、毎回すべて並べて比べるべきです。

6. 中会社の併用方式(Lの割合)と純資産価額との有利選択

中会社は、類似業種比準価額と純資産価額(相続税評価額)を、Lの割合で組み合わせて評価します(同179(2))。Lは、総資産価額(帳簿価額)と従業員数で決まる割合と、取引金額で決まる割合のうち大きい方です。計算例の会社は、総資産5億円以上(従業員35人超)と取引金額4億円以上15億円未満のどちらでも0.90に当たります。

純資産価額を1株22,000円(含み益のある土地などを相続税評価額に洗い替え、評価差額に対する法人税額等相当額を差し引いた後の金額。仮の数字)とすると、評価額は次のとおりです。
5,473円×0.90+22,000円×(1−0.90)=4,925.7円+2,200円=7,125円(円未満切り捨て)

同じ数字の会社が、会社規模だけ違ったら評価額はどうなるかを並べると、次のようになります。

会社規模(しんしゃく割合)類似業種比準価額評価額(1株)2万株の評価額
大会社(0.7)543×1.68×0.7=638.5円→6,385円6,385円1億2,770万円
中会社 L=0.90(0.6)5,473円7,125円1億4,250万円
中会社 L=0.75(0.6)5,473円5,473×0.75+22,000×0.25=9,604円1億9,208万円
中会社 L=0.60(0.6)5,473円5,473×0.60+22,000×0.40=12,083円2億4,166万円
小会社(0.5、L=0.50を選択)543×1.68×0.5=456.1円→4,561円4,561×0.50+22,000×0.50=13,280円2億6,560万円
(参考)純資産価額のみ−22,000円4億4,000万円

類似業種比準価額が純資産価額より低い会社では、会社規模が大きいほど類似業種比準価額の割合が高くなり、評価額は下がります。逆に、類似業種比準価額が純資産価額より高い会社は、大会社なら純資産価額を、中会社なら算式中の類似業種比準価額を純資産価額に置き換えて評価できます(同179(1)(2))。小会社は、純資産価額とLを0.50とした併用方式の低い方を選べます(同179(3))。どの方法が有利かは、必ず両方を計算して確かめます。

参考記事:純資産価額方式とは?計算式・計算例と、決算書の純資産と評価額がずれる3つの理由

7. 比準要素数1・0の会社は、純資産価額を中心に評価する

比準要素の多くが0の会社は「特定の評価会社」となり、類似業種比準方式は原則として使えません(同189)。

区分判定評価方法
比準要素数1の会社直前期末のⒷ・Ⓒ・Ⓓのうち2つが0で、かつ直前々期末を基準にした3つのうち2つ以上が0。配当と利益は直前期末以前3年間の実績を反映(同189(1)の注)純資産価額。ただし納税者の選択で、Lを0.25とした併用方式も使える(同189-2ただし書)
比準要素数0の会社直前期末のⒷ・Ⓒ・Ⓓがいずれも0。配当と利益は直前期末以前2年間の実績を反映(同189(4)の注)純資産価額(開業後3年未満の会社等。同189(4)・189-4)

判定用の利益は、直前期と2年平均のどちらでも計算できるため、「無配で、ある年だけ赤字」といった会社は、選び方によって比準要素数1の会社に当たるかどうかが変わることがあります。比準要素数1の会社になると評価額が大きく上がることが多いため、無配・赤字が続く会社は、数期先まで見て判定しておくべきです。特定の評価会社の判定の全体は、次の記事で解説しています。

参考記事:非上場株式(取引相場のない株式)の評価方法|同族株主・会社規模の判定から評価方式が決まる4ステップ

8. 類似業種比準価額が低く出やすい理由と、見直し案(廃止の方向)との関係

計算例でも、類似業種比準価額は純資産価額の4分の1程度でした。大きな理由は配当です。国税庁の有識者会議の第1回資料によると、分析した700社のうち577社(82.4%)が評価直前2期に配当をまったく支払っておらず、配当Ⓑが0だと比準要素の係数が実質的に3分の2になります。仮に利益と純資産が類似業種の平均と同じでも、無配の大会社の評価額は株価Aの0.47倍(2/3×0.7)にとどまります(第1回資料9ページ)。

計算例の会社が無配だったとすると、No.2の比準割合は(0+1.54+2.50)÷3=1.34、比準価額は543×1.34×0.6=436.5円で、類似業種比準価額は4,365円です。配当があるときの5,473円から約2割下がります。

こうした分析を踏まえ、国税庁は第5回会議(2026年8月20日)で、類似業種比準方式は存置が困難ではないかとの案(廃止の方向)を示し、新しい原則として残余利益方式を挙げています(第5回・第6回資料)。ただし、2026年10月26日時点では検討段階の案で確定しておらず、適用時期も示されていません。現行ルールで正しく計算したうえで、見直し案での試算と並べておくのが現実的です。

参考記事:非上場株式(自社株)の評価の改正・見直しはどうなる?類似業種比準方式の廃止案と残余利益方式|国税庁 有識者会議・第6回までの要点

参考記事:残余利益方式とは?計算式と計算例|還元率・しんしゃく率・正常利益の考え方

まとめ|類似業種比準価額は「50円換算」と「選択」で決まる

自社株の類似業種比準価額、業種目・株価A・利益の期間の選択まで確かめて計算していますか?類似業種比準価額は、決算書・申告書と国税庁の公表データで計算できる一方、選び方ひとつで評価額が1割以上動くこともあります。後継者への贈与や株式の移動を考えているなら、数字を出してから判断するべきです。

次のどれかに当てはまるなら、一度計算し直しておくべきです。
• ここ数年、自社株の評価額を確認していない
• 事業の内容が変わり、業種目が以前と違う可能性がある
• 無配が続いている、または赤字の期がある(比準要素数1の会社に当たらないか)
• 後継者への贈与や、持株会社の設立を予定している

自社株の評価・事業承継でお悩みなら、プラスト税理士法人へご相談ください

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• 類似業種比準価額と純資産価額を計算し、有利な評価方法を確かめたい
• 現行ルールと見直し案(残余利益方式)の両方で自社株を試算したい
• 試算結果をもとに、贈与・事業承継の時期と方法を組み立てたい

プラスト税理士法人は、自社株の評価・株価算定から、事業承継・組織再編、M&Aまでを一貫して支援しています。国税庁が業種目別株価を更新するたびに最新の数字で試算し、見直しの議論も会議資料が公表されるたびに確認しています。初回のご相談は無料です。

よくある質問

●類似業種比準価額とは何ですか?
評価会社と同じ業種の上場会社の株価(株価A)に、配当・利益・簿価純資産の3つを比べた割合(比準割合)と、会社規模に応じた割引(大会社0.7・中会社0.6・小会社0.5)を掛けて求める、非上場株式の評価額です(財産評価基本通達180)。同族株主等が取得した株式について、大会社は原則としてこの方法で、中会社は純資産価額との併用方式で評価します。

●類似業種比準価額の計算式を教えてください。
類似業種の株価A×{(Ⓑ/B+Ⓒ/C+Ⓓ/D)÷3}×しんしゃく割合(大会社0.7・中会社0.6・小会社0.5)で、1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の価額を出し、最後に「1株当たりの資本金等の額÷50円」を掛けて実際の1株の価額に戻します。Ⓑ・Ⓒ・Ⓓは評価会社、B・C・Dは類似業種の配当・利益・純資産です。

●業種目別株価はいつ・どこで公表されますか?
国税庁が年分ごとに、法令解釈通達「令和○年分の類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について」で公表しています。令和8年分は2026年6月5日付の通達で定められ、その後の改正で月ごとの株価が追加されています(2026年10月8日付の改正で8月分まで掲載)。株価Aは、課税時期の属する月・前月・前々月の株価、前年平均株価、課税時期の属する月以前2年間の平均株価のうち、最も低いものを使えます(財産評価基本通達182)。

●類似業種比準価額と純資産価額は、どちらが高くなりますか?
会社によりますが、類似業種比準価額の方が低くなる会社が多数です。国税庁の有識者会議の第1回資料では、令和5年分の申告から抽出した会社の数字を平成29年改正後の算式に当てはめると、82%の会社で類似業種比準価額が純資産価額の50%未満でした。類似業種比準価額の方が高い場合は、大会社・中会社は純資産価額を選んで評価できます(財産評価基本通達179)。

●無配の会社は、類似業種比準価額が下がりますか?
下がります。配当Ⓑが0でも比準割合は3で割るため、比準要素の係数が実質的に3分の2になります。ただし、利益も0の年が続くなどして比準要素数1の会社に当たると、純資産価額を中心に評価することになり、かえって評価額が上がることがあります(財産評価基本通達189・189-2)。

●赤字の会社の類似業種比準価額はどうなりますか?
利益Ⓒは、課税所得金額をもとにした金額がマイナスなら0として計算するため、比準割合が下がり、類似業種比準価額は低くなります(財産評価基本通達183(2))。ただし、無配で赤字が続くなどして、直前期末のⒷ・Ⓒ・Ⓓのうち2つが0、直前々期末基準でも2つ以上が0になると比準要素数1の会社となり、純資産価額を中心に評価します(同189(1)・189-2)。利益は直前期か2年平均かを選べるため、判定の際は両方を確認します。

【主な根拠資料】国税庁「財産評価基本通達」180〜184(類似業種比準価額)/同178・179・185・188・189・189-2・189-4(取引相場のない株式の評価上の区分、評価の原則、純資産価額、特定の評価会社)/国税庁「令和8年分の類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について」(令和8年6月5日 課評2-41、最終改正 令和8年10月8日 課評2-68)/国税庁「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」・記載方法等(令和8年4月1日以降用)/国税庁タックスアンサーNo.4638「取引相場のない株式の評価」/国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」第1回資料(令和8年4月20日)・第5回資料(令和8年8月20日)・第6回資料(令和8年9月16日)
※会議資料のページは、各資料の下部に印字されたページ番号です。
※第5章・第6章の計算例は、令和8年分の公表データ(業種目No.2・No.4)に仮の会社の数字を当てはめて当法人で計算したものです。
※本記事は2026年10月26日時点の通達・公表資料に基づく一般的な解説です。有識者会議で示された内容は検討段階の案であり、確定したものではありません。個別の事案への適用・最終判断は、担当税理士にご確認ください。
※ 最終判断は担当税理士が行ってください。本記事は補助情報です。

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