
配当還元方式(配当還元価額)を財産評価基本通達188・188-2の原文で整理|使える株主の判定表、計算式と3つの計算例、従業員持株会・少数株主との売買での注意点
オーナー企業の事業承継・株価算定と、スタートアップの資本政策を支援しているプラスト税理士法人です。
「社員に自社株を持ってもらうなら、配当還元方式で安く渡せると聞いたけど本当?」
「親戚が持つ少しの株を買い取りたい。いくらで?」
配当還元方式は、自社株(非上場株式)の評価方法のなかで評価額が最も低くなりやすい方法です。税理士法人として忖度なしでお伝えすると、配当還元方式は会社が選ぶ方法ではなく、「誰が・いつの議決権で」株を持つかで使えるかどうかが決まります。
本記事では、少数株主への株式の移転や従業員持株会を検討しているオーナー経営者と経理・財務の担当者に向けて、使える株主の判定、計算式と計算例、実務で使う場面の注意点を、国税庁の通達の原文に沿って解説します。見直し案の動きにも触れるので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の結論(2026年10月26日時点)
配当還元方式とは、同族株主以外の株主など会社を支配していない株主が取得した非上場株式を、直前2年間の平均配当額を10%で割り戻して評価する方法で、無配なら1株当たりの資本金等の額の半分になります。
• 使えるのは、財産評価基本通達188(1)〜(4)に当たる株主が取得した株式だけです(→使える株主の判定表へ)。
• 計算式は、配当還元価額=その株式に係る年配当金額÷10%×1株当たりの資本金等の額÷50円です。特別配当・記念配当は除き、2円50銭未満や無配なら2円50銭とします。原則的評価方式の価額のほうが低ければ、そちらで評価します(同188-2・183(1)。→計算例へ)。
• 個人が法人に売る場面では、所得税基本通達59-6により「売る人の譲渡直前の議決権」で判定するなど、相続・贈与とは物差しが変わります。従業員持株会への配当還元価額での移転は、条件次第で成り立ちうる有力な仮説で、個別の確認が必要です。
• 使える株主の範囲や2円50銭の扱いは国税庁の有識者会議で見直しが議論されていますが、検討段階の案で確定していません。
1. 配当還元方式とは?会社を支配しない株主のための特例的評価方式
配当還元方式とは、非上場株式のうち同族株主以外の株主などが取得した株式を、1年間の配当金額を10%で割り戻して(=還元して)評価する方法で、この方法で求めた1株当たりの価額を配当還元価額といいます。国税庁のタックスアンサーNo.4638は、同族株主以外の株主が取得した株式は、会社の規模にかかわらず、原則的評価方式に代えて特例的な評価方式である配当還元方式で評価すると説明しています。経営を左右できない株主にとって、株式から得られる利益は主に配当だからです。原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式・併用方式)より低くなりやすいのが特徴です。
参考記事:非上場株式(取引相場のない株式)の評価方法|同族株主・会社規模の判定から評価方式が決まる4ステップ
参考記事:類似業種比準価額の計算方法|計算式・比準要素の求め方・株価Aと業種目の選び方を計算例で解説
参考記事:純資産価額方式とは?計算式・計算例と、決算書の純資産と評価額がずれる3つの理由
2. 配当還元方式を使える株主は?財産評価基本通達188の4つの区分
配当還元方式を使えるのは、①同族株主のいる会社の同族株主以外の株主、②取得後5%未満で役員でない同族株主(中心的な同族株主を除く)、③同族株主のいない会社で15%未満のグループの株主、④同族株主のいない会社で15%以上のグループに属する、取得後5%未満で役員でない株主、が取得した株式です(財産評価基本通達188(1)〜(4)。②④は中心的な同族株主・中心的な株主がいる会社に限る)。
判定の要点は次のとおりです。
• 株式の数ではなく議決権の数で判定します。自己株式・相互保有株式の議決権は0、一部の事項に議決権のない種類株式は含めます(同188-3〜188-5)。
• 同族関係者は、親族(6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族)、内縁関係の人、個人株主の使用人など(法人税法施行令4条)。会社の従業員は、一般に個人株主の使用人には当たりません。
• 役員は、社長・理事長と同施行令71条1項1号・2号・4号の役員(代表取締役、副社長・専務・常務、監査役、会計参与など)で、いわゆる平取締役は含まれません。課税時期(=相続・贈与で株式を取得した日)に役員である人と、法定申告期限までに役員となる人が対象です(同188(2))。
同族株主(30%・50%超)、中心的な同族株主(25%)を含む判定手順の全体は、次の記事で解説しています(参考記事:非上場株式(取引相場のない株式)の評価方法|同族株主・会社規模の判定から評価方式が決まる4ステップ)。
| 会社の区分 | 配当還元方式を使える株主 | 通達 |
|---|---|---|
| 同族株主のいる会社 | ① 同族株主以外の株主 | 188(1) |
| 同族株主のいる会社(中心的な同族株主がいる) | ② 中心的な同族株主ではなく、取得後の議決権が5%未満で、役員でない同族株主 | 188(2) |
| 同族株主のいない会社 | ③ 議決権の合計が15%未満のグループの株主 | 188(3) |
| 同族株主のいない会社(中心的な株主がいる) | ④ 15%以上のグループに属するが、取得後の議決権が5%未満で、役員でない株主(中心的な株主=15%以上のグループで単独10%以上を持つ株主) | 188(4) |
役員かどうかが問われるのは②④の人だけです。①同族株主以外の株主と③15%未満のグループの株主は、役員でも配当還元方式で評価します。
判定例|同じ「3%の株主」でも結論が変わる
議決権の割合が、社長50%、社長の配偶者10%、長男(専務)8%、社長の甥3%(役員ではない)、従業員Bさん2%、創業時に出資した知人Cさん(親族ではない)27%の会社で、株式を取得した後の状態とします。
| 株主 | 判定 | 評価方法 |
|---|---|---|
| 社長・配偶者 | 71%のグループで同族株主。社長は配偶者・長男と合わせ68%で中心的な同族株主 | 原則的評価方式 |
| 長男(専務) | 同族株主で8%、役員 | 原則的評価方式 |
| 甥(3%) | 同族株主(3親等の血族)だが、本人と近親者の合計3%で中心的な同族株主でなく、5%未満で役員でもない | 配当還元方式(188(2)) |
| 従業員Bさん | 社長グループの同族関係者ではない | 配当還元方式(188(1)) |
| 知人Cさん(27%) | 最も多いグループが50%超の会社で、Cさんのグループは50%超ではないため同族株主以外。役員に就任しても①のまま | 配当還元方式(188(1)) |
甥が専務に就任すれば、同じ3%でも原則的評価方式に変わります。「何%なら配当還元方式」とは一律に決まりません。
※特定の評価会社(比準要素数1の会社、株式等保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満の会社等)でも、同族株主以外の株主等が取得した株式は配当還元方式で評価します(純資産価額方式等による価額のほうが低ければその価額。同189-2〜189-4のなお書き)。開業前・休業中の会社と清算中の会社には、この扱いがありません(同189-5・189-6)。
3. 配当還元方式の計算式|年配当金額÷10%×1株当たりの資本金等の額÷50円
財産評価基本通達188-2の算式は、次のとおりです。
配当還元価額 = その株式に係る年配当金額 ÷ 10% × その株式の1株当たりの資本金等の額 ÷ 50円
年配当金額は1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額なので、最後に「1株当たりの資本金等の額÷50円」を掛けて実際の1株当たりに直します(同188-2の注)。資本金等の額(法人税法2条16号)は、おおむね株主からの払込額の累計です。
| 項目 | 計算方法 | 根拠 |
|---|---|---|
| 年平均配当金額 | 直前期末(=課税時期の直前に終わった事業年度の末日)以前2年間の配当の合計÷2。特別配当・記念配当など毎期続くと見込めない配当と、資本金等の額の減少による配当は除く | 通達183(1)・同(注)1 |
| 1株(50円)当たりの年配当金額 | 年平均配当金額÷(直前期末の資本金等の額÷50円)。2円50銭未満と無配は2円50銭 | 通達188-2・183(1) |
| 1株当たりの資本金等の額 | 直前期末の資本金等の額(別表五(一)の差引合計額)÷(発行済株式数−自己株式数) | 評価明細書 第3表と記載方法等 |
| 還元率 | 10% | 通達188-2 |
【早見】50円換算の年配当金額が2円50銭以上のときは、配当還元価額=実際の1株当たりの年平均配当額×10。無配や2円50銭未満のときは、配当還元価額=1株当たりの資本金等の額×1/2。
4. 配当還元価額の計算例|配当あり・無配・原則的評価方式が低い場合の3ケース
結論:配当があれば「1株配当の10倍」、無配なら「資本金等の額の半分」、原則的評価方式のほうが低ければそちらです(金額は仮の数字)。
ケース①:配当のある会社(記念配当あり)
前提:直前期末の資本金等の額1,000万円、発行済株式数20,000株(自己株式なし)、直前期の配当160万円(うち創業記念配当40万円)、直前々期の配当100万円。
| 手順 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| ① 1株当たりの資本金等の額 | 1,000万円÷20,000株 | 500円 |
| ② 50円換算の株式数 | 1,000万円÷50円 | 200,000株 |
| ③ 年平均配当金額 | (160万円−記念配当40万円+100万円)÷2 | 110万円 |
| ④ 1株(50円)当たりの年配当金額 | 110万円÷200,000株 | 5円50銭(2円50銭以上) |
| ⑤ 配当還元価額 | 5.5円÷10%×(500円÷50円)=55円×10 | 550円 |
検算:実際の1株当たりの年平均配当は110万円÷20,000株=55円で、その10倍の550円と一致します。記念配当を除かないと、(160万円+100万円)÷2=130万円、130万円÷200,000株=6円50銭、6.5円÷10%×10=650円となり、100円高く評価してしまいます。原則的評価方式による価額が仮に1株4,800円なら、低いほうの550円で評価します。
ケース②:無配の会社
同じ会社が2期とも無配なら、1株(50円)当たりの年配当金額は2円50銭です。配当還元価額 = 2.5円÷10%×(500円÷50円)=25円×10=250円(資本金等の額500円の半分)。
ケース③:原則的評価方式のほうが低い会社(通達188-2ただし書)
前提:直前期末の資本金等の額5,000万円、発行済株式数1,000株、無配。赤字が続き、原則的評価方式(純資産価額方式)による価額が1株18,000円とします。
• 1株当たりの資本金等の額:5,000万円÷1,000株=50,000円
• 配当還元価額:2.5円÷10%×(50,000円÷50円)=25円×1,000=25,000円
• 25,000円が原則的評価方式の18,000円を超えるため、18,000円で評価します。
無配の会社の配当還元価額は資本金等の額だけで決まり、赤字の影響を受けません。赤字が続き、純資産が資本金等の額の半分を下回る会社では、配当還元方式のほうが高くなります。ストックオプションの権利行使価額を決める場面の注意点は、次の記事で解説しています。
参考記事:【税制適格ストックオプション】導入の流れと権利行使価額(株価)の決め方|VCから優先株で調達した後でも慌てないために
5. 実務で配当還元方式が使われる場面|従業員持株会・少数株主との売買・ストックオプション
(1) 従業員持株会に株式を移すとき
持株会を民法上の組合として設立した場合、会員の従業員の多くは同族株主以外の株主に当たるため、オーナーから持株会への譲渡や払戻しの価格を配当還元価額を基準に設計することが、実務でよく検討されます。当法人は、条件がそろえば配当還元価額での移転は成り立ちうる有力な仮説と位置づけ、次の点を個別に確認したうえで制度設計をお手伝いしています。
• 持株会の法的性格:民法上の組合として設立し、会員が株式を持つ形が前提です。人格のない社団と判断されると所得税法上は法人とみなされ(所得税法4条)、オーナー側にみなし譲渡(=時価で売ったものとみなして課税されること。同法59条1項2号)の問題が生じるおそれがあります。
• 受け取る側の贈与税:時価より著しく低い価額で譲り受けると、差額は贈与とみなされます(相続税法7条)。
• 報酬としての性格:持株会の固定価格が相続税評価額より低いと給与課税(経済的利益)の問題が生じうると、国税庁の資料でも指摘されています(取引相場のない株式の評価の見直し(骨子)7ページ)。
• 時期と加入者:M&AやIPOが具体化した後の移転は、配当還元価額が時価として妥当かが別に問われる可能性があります。同族株主のうち役員、中心的な同族株主、取得後の議決権が5%以上の人などが会員に加わる場合は、原則的評価方式の株価で考えます。
参考記事:【資本政策】資本政策表の作り方と持株比率の計算例|創業時に避けたい3つの株の持ち方
関連ページ:非上場会社の従業員持株会の設立・事務局業務の支援
(2) 少数株主から買い取る・少数株主に譲渡するとき
売買では、誰が売り誰が買うかで判定する人と時点が変わります。個人が法人に時価の2分の1未満で売るとみなし譲渡となり(所得税法59条1項2号、同法施行令169条)、その時価は所得税基本通達59-6により売る人の譲渡直前の議決権で判定します。法人が売る場合は法人税基本通達2-3-4・4-1-6によります。
| 取引 | 主な論点と根拠 | 配当還元価額との関係 |
|---|---|---|
| 少数株主(個人)→オーナー(個人) | 買うオーナー側の贈与税(相続税法7条) | 原則的評価方式が基準。配当還元価額で買うと差額に贈与税のおそれ |
| オーナー(個人)→従業員(個人)・持株会(民法上の組合) | 受け取る側の贈与税(相続税法7条)、報酬としての性格 | 前の(1)のとおり。有力な仮説として個別に確認 |
| 少数株主(個人)→発行会社(自己株式) | みなし譲渡(所得税法59条1項2号・所得税基本通達59-6)、みなし配当(=代金の一部が配当として課税されること。同法25条1項5号)、同族会社なら他の株主への贈与(相続税法9条、相続税法基本通達9-2(4)) | 売る人が少数株主なら、配当還元価額が時価の基準になりうる |
| オーナー(個人)→資産管理会社など(法人) | みなし譲渡(同上)、買う法人の受贈益(=低額で受け取った利益への課税) | 原則的評価方式(中心的な同族株主なら小会社扱い)が基準 |
| 法人株主→個人・法人 | 売る法人の譲渡対価(法人税基本通達2-3-4・4-1-6) | 売る法人が中心的な同族株主に当たれば小会社扱いの原則的評価方式。取引ごとに確認 |
相続・贈与と売買で物差しが変わる点は、次の記事でも解説しています(参考記事:非上場株式(取引相場のない株式)の評価方法|同族株主・会社規模の判定から評価方式が決まる4ステップ)。
(3) 税制適格ストックオプションの権利行使価額を決めるとき
非上場会社の税制適格ストックオプションの権利行使価額は、租税特別措置法関係通達29の2-1(令和5年7月新設)により、一定の条件のもとで財産評価基本通達の例で算定した株価以上であればよいとされています。国税庁「ストックオプションに対する課税(Q&A)」及び通達の解説の参考3では、同族株主等以外の人には配当還元方式(原則的評価方式も可)が示されています。ただし、ケース③のように配当還元価額のほうが高くなることもあり、種類株式がある場合の計算などは前掲のストックオプションの記事で解説しています。
6. 配当還元方式の見直し案|適用できる株主の範囲と2円50銭(検討段階)
国税庁の有識者会議は、配当還元方式の還元率(10%)が近年の金利水準より相対的に高いおそれがあるとの会計検査院の指摘も踏まえて開かれ(開催案内)、株主構成の操作で評価額を最大約98%圧縮した事例も示されています(第5回資料7ページ)。
• 配当還元方式の対象を、配当を受け取る以外に経済的利益を期待できない少数株主に絞る方向で、同族関係者の親族の範囲を「配偶者、直系血族、兄弟姉妹、1親等の姻族」に狭め、議決権保有割合と株式保有割合を用いて判定する(いずれかの割合が3%未満)案(第5回 当日机上配付資料〈取引相場のない株式の評価の見直し(骨子)〉10ページ)
• 法人税申告書等を使わず、受取配当金と還元率で計算する簡便な方法への見直し案(同10ページ)と、最低配当2円50銭の計算方法の見直し(第5回資料5ページ)
• 固定価格の従業員持株会の株式の評価方法と控除方式は第6回の論点、配当還元方式(意義・適用される株主の範囲・算式)と還元率の算出方法は第7回以降の想定論点(第6回資料1ページ)
いずれも2026年10月26日時点で検討段階の案で、確定していません(適用時期も未定)。議論の全体像は次の記事で更新しています。
参考記事:非上場株式(自社株)の評価の改正・見直しはどうなる?類似業種比準方式の廃止案と残余利益方式|国税庁 有識者会議・第6回までの要点
7. まとめ|配当還元方式は「誰が・いつの議決権で」持つかで決まる
社員や親族に株式を移す計画、その株主が本当に配当還元方式の対象か、売る側・買う側の両方で確かめていますか?計算は簡単でも、株主の判定、役員かどうか、売買の向き、見直しの動向まで押さえて初めて使える方法です。
次のどれかに当てはまるなら、一度確認しておくべきです。
• 従業員持株会の設立や、オーナーから持株会への株式の移転を検討している
• 親族や元役員などの少数株主から、株式を買い取る予定がある
• 少数株主の議決権が5%・15%の前後にあり、役員の就任・退任も予定している
• 税制適格ストックオプションの権利行使価額を、配当還元価額で決めようとしている
自社株の評価・従業員持株会でお悩みなら、プラスト税理士法人へご相談ください
こんな経営者様はご相談ください。
• 株主ごとに配当還元方式と原則的評価方式のどちらになるかを判定し、株価を算定してほしい
• 従業員持株会の設立や株式の移転を、税務の根拠を整理したうえで進めたい
• 資本政策の中で、持株会・ストックオプション・株式の直接保有をどう使い分けるか相談したい
プラスト税理士法人は、株主の判定と株価算定から、従業員持株会の設立・事務局業務、資本政策・事業承継までを一貫して支援しています。初回のご相談は無料です。
- 自社株の評価・株価算定の支援内容はこちら 株価算定・企業価値評価
- 従業員持株会の設立・事務局業務の支援内容はこちら 従業員持株会の設立・事務局支援
- 無料相談・お問い合わせはこちら お問い合わせフォーム
よくある質問
●配当還元方式とは何ですか?
非上場株式の評価方法のうち、同族株主以外の株主など会社を支配していない株主が取得した株式に使う特例的な評価方法です。直前期末以前2年間の平均の配当金額を10%で割り戻して評価します(財産評価基本通達188・188-2)。
●配当還元方式の計算式を教えてください。
配当還元価額=その株式に係る年配当金額÷10%×1株当たりの資本金等の額÷50円です。年配当金額は1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額で、特別配当・記念配当など毎期続くと見込めない配当は除き、2円50銭未満の場合と無配の場合は2円50銭で計算します(財産評価基本通達183(1)・188-2)。配当のある会社では、実際の1株当たり年平均配当の10倍になります。
●配当還元方式を使えるのはどんな株主ですか?
①同族株主のいる会社の同族株主以外の株主、②中心的な同族株主がいる会社で、取得後の議決権が5%未満の役員でない同族株主(中心的な同族株主を除く)、③同族株主のいない会社で議決権の合計が15%未満のグループの株主、④同族株主のいない会社で中心的な株主がいる場合に、15%以上のグループに属するが取得後の議決権が5%未満の役員でない株主、の4つです(財産評価基本通達188(1)〜(4))。判定は株式の数ではなく議決権の数で行います。
●無配の会社の配当還元価額はいくらになりますか?
年配当金額を2円50銭として計算するため、1株当たりの資本金等の額の半分になります。たとえば1株当たりの資本金等の額が500円なら、2.5円÷10%×(500円÷50円)=250円です。ただし、原則的評価方式による価額のほうが低い場合は、その価額で評価します(財産評価基本通達188-2ただし書)。
●役員になると配当還元方式は使えなくなりますか?
役員かどうかで結論が変わるのは、5%未満の同族株主(通達188(2))と、同族株主のいない会社で15%以上のグループに属する5%未満の株主(同188(4))だけです。これらの人は、課税時期に役員である場合や法定申告期限までに役員となる場合に原則的評価方式になります。同族株主以外の株主(同188(1))と15%未満のグループの株主(同188(3))は、役員でも配当還元方式で評価します。
●従業員持株会に配当還元価額で株を譲渡しても問題ありませんか?
条件がそろえば成り立ちうる有力な仮説で、確定した結論ではありません。①持株会が民法上の組合として設立されているか、②受け取る側の贈与税(相続税法7条)、③報酬としての性格、④M&A・IPOが具体化した時期かどうかや同族株主にあたる役員の加入、の4点を個別に確認します。また、個人が法人(発行会社・資産管理会社など)に売る場合は所得税基本通達59-6により売る人の譲渡直前の議決権で、法人が売る場合は法人税基本通達2-3-4・4-1-6により判定するなど、売買の向きで判定の物差しが変わります。
【主な根拠資料】財産評価基本通達185〜188-6(国税庁)/財産評価基本通達178・179・183(1)・189〜189-6/国税庁タックスアンサーNo.4638「取引相場のない株式の評価」/国税庁 質疑応答事例「同族株主の判定」/国税庁「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」(令和8年4月1日以降用)第3表及び記載方法等/法人税法2条16号、同法施行令4条・71条1項/所得税法4条・25条1項5号・59条1項2号、同法施行令169条/所得税基本通達59-6(国税庁)/法人税基本通達2-3-4・4-1-6/相続税法7条・9条、相続税法基本通達9-2(4)/租税特別措置法29条の2第1項3号、租税特別措置法関係通達29の2-1(国税庁)、国税庁「ストックオプションに対する課税(Q&A)」及び通達の解説(令和5年7月)の参考3/国税庁「『取引相場のない株式の評価に関する有識者会議』の開催について」(令和8年4月16日)、同会議 第5回資料・当日机上配付資料(取引相場のない株式の評価の見直し(骨子))(令和8年8月20日)、第6回資料(令和8年9月16日)(国税庁「審議会・研究会等」に掲載)
※計算例の金額は説明のための仮の数字です。
※本記事は2026年10月26日時点の法令・通達と、国税庁が公表している資料に基づく一般的な解説です。有識者会議で示された内容は検討段階の案であり、確定したものではありません(第6回の議事要旨は同日時点で未公表)。
※ 最終判断は担当税理士が行ってください。個別の事案への適用は、担当税理士にご確認ください。
関連キーワード
- 配当還元方式
- 配当還元価額
- 配当還元方式 計算
- 配当還元方式 2円50銭
- 同族株主以外の株主
- 従業員持株会 株価
- 配当還元価額 計算例


