
財産評価基本通達185〜186-3と評価明細書第5表に沿って、計算式・負債の範囲・38%控除を計算例で解説
オーナー企業の事業承継・株価算定を支援しているプラスト税理士法人です。
「うちは小会社だから純資産価額方式と言われたけれど、決算書の純資産とは何が違うの?」
「退職給付引当金は負債なのに、なぜ引けないの?」
純資産価額方式は、自社株(取引相場のない株式)の評価方法の1つで、小会社では原則的な評価方法です。税理士法人として忖度なしでお伝えすると、純資産価額方式の評価額は「どの資産をいくらに洗い替えるか」と「何を負債に入れるか」で大きく変わり、決算書の純資産とずれることが少なくありません。計算式そのものは単純でも、土地・子会社株式・保険積立金・引当金の扱いを1つ誤るだけで、評価額が数千万円単位で動くこともあります。
本記事では、自社株の贈与や相続を考えているオーナー経営者と経理・財務の担当者に向けて、純資産価額方式の計算を、国税庁の評価明細書(第5表)の流れに沿って、数字入りの計算例で解説します。自社株にどの評価方式を使うかの判定は非上場株式(取引相場のない株式)の評価方法|同族株主・会社規模の判定から評価方式が決まる4ステップの記事で解説しているので、本記事は純資産価額の計算に絞ってお伝えします。最後まで読めば、自社の決算書を見ながら、評価額のおおよその水準をつかめるはずです。
この記事の結論(2026年10月26日時点)
• 純資産価額方式とは、会社の資産と負債を相続税評価額で評価し直し、含み益の38%を差し引いた純資産を発行済株式数で割って、1株当たりの評価額を求める方法です(財産評価基本通達185・186-2)。
• 38%(評価差額に対する法人税額等相当額)は、防衛特別法人税の創設に伴い、令和8年4月1日以後の相続・遺贈・贈与から37%が38%に改正されたものです(同186-2)。
• 決算書の純資産と評価額がずれる理由は、①資産を相続税評価額で洗い替える(課税時期前3年以内に取得した土地・建物は通常の取引価額、子会社株式は子会社の段階で38%控除なし)、②引当金・準備金を負債に入れない、③含み益の38%を差し引く、の3つです(同185・186・186-2・186-3)。
• 中会社の併用方式の純資産価額部分と、小会社の純資産価額は、株式を取得した人のグループの議決権が50%以下なら80%で計算します(大会社は対象外。同185ただし書)。
• 国税庁の有識者会議では、純資産価額方式を「特定の評価会社」専用の方式に位置付け直す案が示されていますが、検討段階の案で確定していません。
→ 数字で確かめたい方は「8. 計算例」へ
1. 純資産価額方式とは?会社の財産を相続税の物差しで測り直す評価方法
純資産価額方式とは、会社の資産と負債を相続税評価額で評価し直し、含み益の38%を差し引いた純資産を発行済株式数で割って、1株当たりの評価額を求める方法です(財産評価基本通達185・186-2、国税庁タックスアンサーNo.4638)。
「時価純資産」と決算書の純資産の違い
純資産価額方式は「時価純資産」と呼ばれることもありますが、土地は路線価、建物は固定資産税評価額というように、物差しは相続税の評価ルールです。
| 区分 | 計算のしかた |
|---|---|
| 決算書の純資産 | 帳簿価額による資産 − 負債(引当金も負債に含む) |
| 純資産価額方式 | 相続税評価額による資産 − 負債(引当金・準備金は除く)− 含み益の38% |
M&A・株式の買取価格の算定は、相続税・贈与税の評価とは目的も物差しも異なります。詳しくは株価算定・企業価値評価をご覧ください。
純資産価額方式が使われる場面
同族株主等(=会社を支配する株主グループ)が株式を取得した場合の、会社の区分ごとの使われ方は次のとおりです(同179・189〜189-5)。
| 会社の区分 | 純資産価額方式の使われ方 | 根拠 |
|---|---|---|
| 小会社 | 原則として純資産価額方式。類似業種比準価額×0.50+純資産価額×0.50(併用方式)も選べる | 179(3) |
| 中会社 | 類似業種比準価額×L+純資産価額×(1−L)の併用方式(Lは会社規模で0.90・0.75・0.60)。類似業種比準価額の代わりに純資産価額を使うことも選べる | 179(2) |
| 大会社 | 原則は類似業種比準方式。納税義務者の選択により純資産価額で評価することもできる(通常は純資産価額のほうが低い場合に選ぶ) | 179(1) |
| 特定の評価会社 | 株式等保有特定会社・土地保有特定会社・開業後3年未満の会社等・開業前/休業中の会社などは、原則として純資産価額方式 | 189〜189-5 |
同族株主以外の株主(少数株主)は、原則として配当還元方式で評価します(同188・188-2)。
参考記事:配当還元方式とは?使える株主の判定と計算式・計算例|従業員持株会・少数株主との売買での注意点
2. 純資産価額の計算式|評価明細書「第5表」の4ステップ
相続税・贈与税の申告では、国税庁の「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」の第5表(1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書)で計算します。令和8年4月1日以降用の第5表の流れを、計算式に直すと次のとおりです。
1株当たりの純資産価額 = {相続税評価額による総資産価額 − 負債 − 評価差額に対する法人税額等相当額}÷ 課税時期の発行済株式数
• 評価差額 =(相続税評価額による総資産価額 − 負債)−(帳簿価額による総資産価額 − 負債)
• 評価差額に対する法人税額等相当額 = 評価差額 × 38%
| ステップ | やること(第5表の欄) |
|---|---|
| ① 資産を洗い替える | 資産ごとに「相続税評価額」と「帳簿価額」を並べて記入する(①・②) |
| ② 負債を確定させる | 負債に入れてよいものだけを記入する(③・④) |
| ③ 含み益の38%を引く | 相続税評価額による純資産価額(⑤)から帳簿価額による純資産価額(⑥)を引いた評価差額(⑦)に38%を掛ける(⑧) |
| ④ 株数で割る | ⑤−⑧を課税時期の発行済株式数(自己株式を除く)で割る(⑨〜⑪)。議決権50%以下のグループは80%を掛ける(⑫) |
帳簿価額は、決算書の金額ではなく「税務計算上の帳簿価額」です。固定資産の減価償却累計額や、特別償却準備金・圧縮記帳の引当金・積立金があるときは、それらを差し引いた金額を帳簿価額とします(評価明細書の記載方法等 第5表2(2)・同注1)。
3. 資産の洗い替えのポイント|土地・子会社株式・保険積立金・貸付金
主な資産の評価方法は次のとおりです。
| 資産 | 相続税評価額の考え方 | 根拠 |
|---|---|---|
| 土地(宅地) | 市街地は路線価方式、それ以外は倍率方式 | 評基通11 |
| 建物 | 固定資産税評価額を基に評価 | 評基通89 |
| 課税時期前3年以内に取得・新築した土地等(借地権など土地の上に存する権利を含む)・家屋等(附属設備・構築物を含む) | 課税時期の通常の取引価額。帳簿価額が通常の取引価額に相当すると認められれば帳簿価額でもよい | 評基通185 |
| 預貯金 | 預入高+既経過利子(源泉税相当額を控除) | 評基通203 |
| 貸付金・売掛金・未収入金 | 元本+既経過利息。破産・民事再生などで回収不能または著しく困難な部分は元本に入れない | 評基通204・205 |
| 上場株式 | 課税時期の終値と、課税時期の属する月以前3か月間の毎日の終値の各月ごとの平均額のうち、最も低い価額 | 評基通169 |
| 取引相場のない株式(子会社株式など) | その会社の株式として評価。純資産価額で評価する場合は、子会社の段階で38%控除をしない | 評基通186-3 |
| 保険積立金 | 解約した場合の解約返戻金の額。前納保険料・剰余金の分配額などがあれば加算し、解約返戻金にかかる源泉所得税相当額は減算 | 評基通214 |
| 借地権・営業権など帳簿にない資産 | 相続税評価額が算出されるなら計上し、帳簿価額は0とする。営業権は超過利益を基に計算 | 記載方法等 第5表2(1)ハ、評基通165・166 |
| 帳簿価額はあるが評価額が出ない資産(借家権・営業権など) | 相続税評価額は0とし、帳簿価額は記載する | 記載方法等 第5表2(1)ニ |
| 財産性のない繰延資産・繰延税金資産 | 計上しない(相続税評価額・帳簿価額のどちらにも記載しない) | 記載方法等 第5表2(1)ホ |
※前払費用は、通達・記載方法等に定めがありません。実務上は、返金や役務の提供を受ける権利として財産的な価値があるものは計上し、ないものは計上しない扱いが一般的です。
特に誤りやすいのは、次の3つです。
誤りやすい点① 3年以内に買った土地・建物は「路線価」で評価できない
土地は路線価、建物は固定資産税評価額で評価すると、一般に購入価額より低くなります。そのため、会社に借入れで不動産を買わせて株価を下げる対策がとられてきましたが、課税時期前3年以内に取得・新築した土地等・家屋等は、通常の取引価額で評価します(評基通185の括弧書き)。第5表でも、他の土地・建物と科目を分けて「課税時期前3年以内に取得した土地等」と記載します。
誤りやすい点② 子会社株式は「38%控除なし」で評価して親会社に取り込む
評価会社が持つ子会社株式を純資産価額で評価するときは、子会社の段階では評価差額に対する法人税額等相当額を控除しません(評基通186-3の注)。第5表では「法人税額等相当額の控除不適用の株式」などと科目を分けて記載します。子会社株式の評価額と帳簿価額の差は、親会社の評価差額の一部になり、親会社の段階で38%控除の対象になります。
ただし、現物出資・合併・株式交換・株式移転・株式交付で著しく低い価額で受け入れた資産・株式は、受け入れた時点の含み益(現物出資等受入れ差額)を評価差額から除いて計算します(評基通186-2(2))。受入れ時の評価額が課税時期の評価額を上回るときは課税時期の評価額を基に計算し(同注2)、課税時期の総資産に占めるこれらの資産の割合が20%以下なら適用しません(同注3)。持株会社化と38%控除の関係は、次の記事で計算例つきで解説しています。
参考記事:【ホールディングス化】持株会社の株価対策はもう使えない?評価見直し案で変わる4つのポイントと、いまやるべきこと
誤りやすい点③ 保険積立金は「積み立てた額」ではなく「解約返戻金」
会社が契約者の生命保険は、決算書の保険積立金ではなく、課税時期に解約した場合の解約返戻金の額で評価します(評基通214)。返戻率が低い時期は帳簿価額より低く、逆に損金処理した保険で返戻金が大きければ、帳簿価額0でも資産に計上します。
社長の死亡で会社が死亡保険金を受け取る場合は、扱いが変わります。生命保険金請求権を相続税評価額・帳簿価額の両方に資産として計上し、その保険の保険積立金は資産から除きます。死亡保険金を原資に死亡退職金を支払う場合は、その退職金の額と、退職金を差し引いた後の保険差益に対する法人税額等を負債に計上します(国税庁 質疑応答事例「評価会社が受け取った生命保険金の取扱い」、記載方法等 第5表2(4)注2)。
4. 負債に計上できるもの・できないもの|引当金は引けない
引当金・準備金は、決算書では負債でも、純資産価額の計算では負債になりません。負債に入れられるのは課税時期に確定している債務だけです(評基通186)。決算書の負債と範囲が違うため、ここで評価額が大きく変わります(記載方法等 第5表2(3))。
| 区分 | 主なもの |
|---|---|
| 負債に入る | • 買掛金・借入金・未払金など確定した債務 • 未納の公租公課・未払利息(帳簿に計上がなくても入れる) • 課税時期以前に賦課期日のあった固定資産税・都市計画税の未払分 • 課税時期の属する事業年度の法人税・消費税・事業税・住民税のうち、期首から課税時期までに対応する未払いの金額(課税時期で仮決算をする場合) • 被相続人の死亡により相続人などに支給することが確定した退職手当金・功労金など • 被相続人の死亡で会社が生命保険金を受け取る場合の、保険差益に対する法人税額等 |
| 負債に入らない | • 貸倒引当金、退職給与引当金(退職給付引当金)、納税引当金その他の引当金 • 準備金 • 繰延税金負債 |
退職給付引当金は差し引けないため、従業員が多く引当金が大きい会社ほど、決算書の純資産より評価額が高くなりやすくなります。一方、オーナーの相続で会社が支払う死亡退職金は、支給が確定していれば負債に入るため、相続のときの評価額は下がります。
5. 評価差額に対する法人税額等相当額(38%)の計算
純資産価額方式では、含み益(評価差額)に38%を掛けた「法人税額等相当額」を差し引きます(評基通186-2)。個人が直接持つ財産と違い、会社の資産は売却して含み益を実現すると法人税等がかかるため、その分を差し引く考え方です。
38%は、法人税・地方法人税・防衛特別法人税・事業税・特別法人事業税・道府県民税・市町村民税の税率を合計した37.7316%を丸めた割合です。防衛特別法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用)の創設に伴い、令和8年4月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得した株式から37%が38%に改正されました(国税庁「財産評価基本通達の一部改正について」通達のあらまし〈令和8年3月25日〉)。同日前の相続・贈与は37%のままです。
計算上の注意点は次の3つです。
• 評価差額や帳簿価額による純資産価額がマイナスになるときは0とします(記載方法等 第5表3)。含み損があっても、控除額がマイナス(=加算)になることはありません。
• 繰越欠損金があっても、38%の割合は変わりません。
• 子会社の段階では控除しません(第3章の誤りやすい点②)。
6. 議決権割合50%以下の同族株主グループは80%で評価
株式を取得した人とその同族関係者(=親族や支配している会社など)の議決権の合計が、議決権総数の50%以下の場合は、純資産価額に80%を掛けます(評基通185ただし書)。同族株主の判定は、原則としてグループの議決権30%以上(50%超のグループがある会社では50%超)で行うため(同188(1))、議決権が30%以上50%以下で同族株主に当たるグループが典型的な対象です。同族株主のいない会社で、議決権15%以上のグループに属し原則的評価方式で評価する株主(同188(3)(4))も、議決権が50%以下であれば対象になります。
ただし、80%を掛けられる場面は限られています。通達は対象を「179の(2)の算式及び(3)の1株当たりの純資産価額」としており、評価明細書第3表も次の形になっています。
| 会社の区分 | 80%評価の扱い |
|---|---|
| 小会社 | 純資産価額に80%を掛けた額を使える |
| 中会社 | 算式の「純資産価額×(1−L)」の部分に80%を掛けた額を使える。類似業種比準価額の代わりに純資産価額を選ぶ「×L」の部分は100%のまま |
| 大会社 | 純資産価額を選ぶ場合も80%は使えない |
| 特定の評価会社 | 比準要素数1の会社・株式等保有特定会社・土地保有特定会社・開業後3年未満の会社等は80%を使える(189-2〜189-4)。開業前・休業中の会社は使えない(189-5) |
7. 課税時期で計算するか、直前期末で計算するか|仮決算の扱い
純資産価額は、原則として課税時期(=相続の場合は死亡の日、贈与の場合は贈与で取得した日)の資産・負債で計算し、株数も課税時期の発行済株式数を使います(評基通185、同注1)。厳密には課税時期で仮決算(=期の途中で締めて作る決算)を行うことになります。
ただし、仮決算をしていないため課税時期の資産・負債が明確でない場合に、直前期末から課税時期までに資産・負債の著しい増減がなく、評価額への影響が少ないと認められるときは、次のように直前期末の数字を使ってもかまいません(記載方法等 第5表2(4))。
• 直前期末の資産・負債を、相続税評価額は課税時期の評価額(土地なら課税時期の年分の路線価)で、帳簿価額は直前期末の帳簿価額で記載する
• 帳簿に記載がなくても、未納公租公課・未払利息、直前期末日以前に賦課期日のあった固定資産税・都市計画税の未払分、直前期末後から課税時期までに確定した剰余金の配当、被相続人の死亡により支給が確定した退職手当金などは負債に入れる
「著しい増減」に数値の基準は示されていません。期末から日がたっていて、その間に不動産の売買、多額の借入れや返済、大きな利益・損失があった場合は、仮決算で計算するのが安全です。なお、直前期末の数字を使った場合は、株式等保有特定会社・土地保有特定会社の判定も同じ時点の数字で行います(同)。
8. 計算例|土地・子会社株式・保険積立金がある会社
次の会社の株式を、オーナーが後継者に贈与するケースで計算します(数字は説明のための仮のものです)。
• 卸売業、小売・サービス業以外の業種で、従業員5人以下・直前期末以前1年間の取引金額8,000万円未満の小会社(評基通178)
• 贈与は令和8年4月1日以後(38%を使う)。直前期末から資産・負債に著しい増減はなく、直前期末の数字で計算
• 発行済株式数20,000株(自己株式なし)。オーナー一族で議決権100%
• 子会社株式は、子会社(小会社)を38%控除なしの純資産価額で評価した額
• 課税時期前3年以内に取得した土地は、帳簿価額が通常の取引価額に相当すると認められるものとする
• 帳簿には、ほかに創立費(繰延資産)と繰延税金資産、退職給付引当金・貸倒引当金があるが、いずれも計算に入れない
| 資産(単位:千円) | 相続税評価額 | 帳簿価額 | 評価の考え方 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 30,000 | 30,000 | 預入高(利子は少額のため省略) |
| 売掛金 | 20,000 | 20,000 | 元本 |
| 役員貸付金 | 10,000 | 10,000 | 元本(回収可能) |
| 保険積立金 | 8,000 | 12,000 | 解約返戻金の額 |
| 本社の土地(取得から3年超) | 60,000 | 20,000 | 路線価方式 |
| 本社の建物 | 15,000 | 25,000 | 固定資産税評価額 |
| 課税時期前3年以内に取得した土地 | 40,000 | 40,000 | 通常の取引価額(=帳簿価額) |
| 子会社株式(法人税額等相当額の控除不適用) | 50,000 | 10,000 | 子会社の純資産価額(38%控除なし) |
| 合計 | ①233,000 | ②167,000 |
| 負債(単位:千円) | 相続税評価額 | 帳簿価額 |
|---|---|---|
| 買掛金 | 15,000 | 15,000 |
| 借入金 | 60,000 | 60,000 |
| 未払法人税等(直前期分の未納額) | 5,000 | 5,000 |
| 合計 | ③80,000 | ④80,000 |
第5表の順に計算すると、次のとおりです。
• ⑤ 相続税評価額による純資産価額 = ①233,000 − ③80,000 = 153,000千円
• ⑥ 帳簿価額による純資産価額 = ②167,000 − ④80,000 = 87,000千円
• ⑦ 評価差額 = ⑤153,000 − ⑥87,000 = 66,000千円
• ⑧ 法人税額等相当額 = ⑦66,000 × 38% = 25,080千円
• ⑨ 課税時期現在の純資産価額 = ⑤153,000 − ⑧25,080 = 127,920千円
• ⑩ 課税時期現在の発行済株式数 = 20,000株
• ⑪ 1株当たりの純資産価額 = 127,920,000円 ÷ 20,000株 = 6,396円
この会社は小会社なので、実際の評価額は、この純資産価額(1株6,396円)と、併用方式(類似業種比準価額×0.50+純資産価額×0.50)による価額のうち、低いほうです(評基通179(3))。
参考記事:類似業種比準価額の計算方法|計算式・比準要素の求め方・株価Aと業種目の選び方を計算例で解説
帳簿価額による純資産価額(⑥)87,000千円と評価額の差は、次のとおりです。
| 項目(単位:千円) | 金額 |
|---|---|
| 資産の洗い替えによる評価差額(⑦) | +66,000 |
| 法人税額等相当額(⑧) | ▲25,080 |
| 差の合計(127,920 − 87,000) | +40,920 |
評価差額66,000千円の内訳は、本社の土地+40,000千円、子会社株式+40,000千円、本社の建物▲10,000千円、保険積立金▲4,000千円です。評価額127,920千円は、⑥の約1.47倍になりました。なお、⑥は決算書の純資産と同じではなく、計算から除いた創立費・繰延税金資産・引当金の分だけ異なります。課税時期前3年以内に取得した土地は、路線価で評価すれば帳簿価額より下がる可能性がありますが、この計算では使えません。
あわせて、次の2つも確認しておきます。
• 37%だった場合との差:令和8年3月31日以前の贈与なら、法人税額等相当額は66,000×37%=24,420千円で、1株当たり(153,000−24,420)×1,000÷20,000=6,429円です。改正により1株33円、全体で660千円下がります。
• 議決権50%以下の場合:取得者のグループの議決権が50%以下なら、6,396円×80%=5,116円(円未満切捨て)です。
9. 評価見直し案での純資産価額方式の位置付け
国税庁の「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」では、純資産価額方式を原則的な評価方式から外し、資産管理会社や開業後間もない会社などの「特定の評価会社」に使う方式に位置付け直す案が示されています(第5回資料4ページ)。第6回資料では、区分に応じて引当金や38%控除の扱いを使い分ける考え方(21ページ)や、純資産価額による評価額の頭打ちを残すかどうか(17ページ)も検討事項とされ、3年以内に取得した不動産や80%評価の扱いは第7回以降の論点です(1ページ)。いずれも検討段階の案で確定していません。
参考記事:非上場株式(自社株)の評価の改正・見直しはどうなる?類似業種比準方式の廃止案と残余利益方式|国税庁 有識者会議・第6回までの要点
参考記事:残余利益方式とは?計算式と計算例|還元率・しんしゃく率・正常利益の考え方
10. まとめ|純資産価額方式は「洗い替え」と「負債の範囲」で決まる
自社株の評価額、決算書の純資産のまま「だいたいこのくらい」と思い込んでいませんか?純資産価額方式では、土地の含み益、子会社株式、引当金、3年以内に買った不動産の扱いで、決算書の純資産と評価額が大きくずれることがあります。38%への改正や、見直しの議論もあり、数年前に試算した評価額がそのまま使えるとは限りません。
次のどれかに当てはまるなら、一度計算し直しておくべきです。
• 本社の土地を長く持っていて、含み益が大きい
• 子会社株式や、ここ3年以内に買った不動産がある
• 退職給付引当金が大きく、決算書の純資産が小さく見えている
• 後継者への贈与や、持株会社の設立を予定している
自社株の評価・事業承継でお悩みなら、プラスト税理士法人へご相談ください
こんな経営者様はご相談ください。
• 純資産価額方式で、自社株の評価額を正確に計算したい
• 類似業種比準方式・配当還元方式とあわせて、どの方式でいくらになるかを比べたい
• 評価額をもとに、贈与・相続・事業承継税制の使い方を組み立てたい
プラスト税理士法人は、自社株の評価・株価算定から、事業承継・組織再編、M&Aまでを一貫して支援しています。国税庁の通達改正や有識者会議の資料を確認し、評価の前提を更新しています。初回のご相談は無料です。
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よくある質問
●純資産価額方式とは何ですか?
会社の資産と負債を相続税評価額で評価し直し、含み益の38%を差し引いた純資産を発行済株式数で割って、1株当たりの評価額を求める方法です(財産評価基本通達185・186-2)。小会社の原則的な評価方法で、中会社の併用方式や特定の評価会社の評価にも使われます。
●法人税額等相当額は37%ですか、38%ですか?
令和8年4月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得した株式は38%、同日前は37%です。防衛特別法人税の創設に伴う改正で、法人税等の税率の合計(37.7316%)を丸めた割合です(財産評価基本通達186-2、国税庁「財産評価基本通達の一部改正について」通達のあらまし〈令和8年3月25日〉)。
●純資産価額方式と類似業種比準方式の違いは何ですか?
純資産価額方式は会社の財産(資産−負債)から1株の価額を求めるのに対し、類似業種比準方式は上場している同業種の株価を基に、1株当たりの配当金額・利益金額・純資産価額(簿価)の3つを比べて評価します(国税庁タックスアンサーNo.4638)。大会社は原則として類似業種比準方式、小会社は原則として純資産価額方式、中会社は両方の併用で評価します(財産評価基本通達179)。
●純資産価額方式で評価額が高くなるのはどんな会社ですか?
古くから持つ土地など含み益の大きい資産がある会社、課税時期前3年以内に不動産を取得した会社、退職給付引当金などの引当金が大きい会社、利益を積み上げて純資産が厚い会社です。含み益は38%を差し引けますが、残りの62%は評価額に上乗せされます(財産評価基本通達185・186・186-2)。
●議決権が50%以下の株主は、純資産価額を80%にできますか?
株式を取得した人とその同族関係者の議決権の合計が50%以下の場合は、純資産価額の80%で評価します(財産評価基本通達185ただし書)。使えるのは中会社の併用方式の純資産価額の部分、小会社、特定の評価会社(同189-2〜189-4)の評価で、大会社が純資産価額を選ぶ場合や開業前・休業中の会社には使えません。
【主な根拠資料】財産評価基本通達11・89・165・166・169・178・179・185・186・186-2・186-3・188・188-2・189〜189-5・203・204・205・214/国税庁「相続税及び贈与税における取引相場のない株式等の評価明細書の様式及び記載方法等について」(令和8年4月1日以降用。第3表・第5表)/国税庁「『財産評価基本通達の一部改正について』通達のあらましについて(情報)」(令和8年3月25日)/国税庁 質疑応答事例「評価会社が受け取った生命保険金の取扱い」/国税庁タックスアンサーNo.4638「取引相場のない株式の評価」/国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」第5回資料4ページ(令和8年8月20日)、第6回資料1・17・21ページ(令和8年9月16日)
※第8章の計算例の数字は説明のための仮のものです。
※本記事は2026年10月26日時点の法令・通達と国税庁の公表資料に基づく一般的な解説です。有識者会議で示された内容は検討段階の案であり、確定したものではありません(第6回の議事要旨は同日時点で未公表)。個別の事案への適用・最終判断は、担当税理士にご確認ください。
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