
非上場会社が株主から自社株を買い取る「自己株式の取得」を、所得税法・法人税法・会社法の条文で整理|買取価格(株価)の決め方、売る株主のみなし配当、相続した株の特例、手続きと仕訳
オーナー企業の事業承継・株価算定と、スタートアップの資本政策を支援しているプラスト税理士法人です。
「退職する役員の株を、会社で買い取りたい。いくらで買えばいい?」
「父から相続した自社株を、会社に買い取ってもらうと税金はどうなる?」
非上場会社が株主から自社株を買い取る「自己株式の取得(自社株買い)」は、少数株主の整理や事業承継でよく使われます。税理士法人として忖度なしでお伝えすると、会社が買い取る場合は、売った人が受け取る代金の多くが「配当」として課税されるため、個人に売るときと同じ感覚で価格を決めると、思わぬ税負担になりやすい取引です。
本記事では、株主からの株式の買取りを検討している非上場会社の経営者と経理・財務の担当者に向けて、買取価格の決め方、売る株主の税金、会社側の手続きと仕訳を、条文と計算例で解説します。相続した株の特例にも触れるので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の結論(2026年11月6日時点)
自己株式の取得とは、会社が自社の株式を株主から買い取ることです(会社法155条)。
非上場会社の自己株式の取得では、個人株主からの買取価格は所得税基本通達59-6の時価を目安に決め、売った個人株主は受け取った代金を「みなし配当(総合課税)」と「譲渡所得」の2つに分けて課税されます。
• 個人株主から時価の2分の1未満で買い取ると、売った人は時価で売ったものとみなされます(所得税法59条1項2号・同法施行令169条。→買取価格の決め方へ)。
• 売った人が受け取る代金のうち、資本金等の額のうちその株式に対応する部分を超える部分はみなし配当です。会社は支払の際に20.42%を源泉徴収します(所得税法25条1項5号・181条・182条2号。→計算例へ)。
• みなし配当はほかの所得と合算して課税されるため、所得が多い人は、個人に売るより税負担が重くなりやすくなります(課税所得2,000万円の人の計算例で約96万円の差)。
• 相続した非上場株式を、相続税の申告期限の翌日以後3年以内に会社へ売る場合は、届出によりみなし配当とせず全額を譲渡所得にできます(租税特別措置法9条の7)。
• 会社側は、取得の効力が生じる日の分配可能額の範囲内で買い取る必要があり、特定の株主から買う場合は株主総会の特別決議が必要とされています(会社法156条・160条・309条2項2号・461条1項。→手続きへ)。
• 会社の仕訳は、支払総額を「自己株式」(純資産のマイナス)に計上し、みなし配当の源泉所得税を「預り金」で差し引きます(→仕訳へ)。
1. 自己株式の取得とは?非上場会社が自社株を買い取る場面
自己株式の取得とは、会社が自ら発行した株式を株主から買い取ることで、「自社株買い」や「金庫株」とも呼ばれます。上場会社では市場から買う方法が中心ですが、非上場会社では、特定の株主と話し合って相対(あいたい=当事者どうしの直接の取引)で買い取るのが一般的です。
非上場会社で自己株式の取得がよく使われるのは、次のような場面です。
| 場面 | よくある事情 |
|---|---|
| 少数株主の整理 | 退職した役員・従業員や、遠い親族が持つ株を集めたい |
| 相続した株の買取り | オーナーの相続人が、相続税の納税資金のために株を現金化したい |
| 事業承継の準備 | 後継者に株を集める前に、分散した株を会社に戻したい |
| 従業員持株会からの買取り | 従業員持株会の会員の退会や、持株会の解散に伴って株を引き取る |
会社が買い取った自己株式には議決権がなく、配当も受けません。そのため、買取り後は残った株主の議決権の割合が上がります。持株比率を整えたいときに使いやすい一方で、価格・税金・手続きの3つを同時に押さえないと、売り手・会社・残った株主のどこかに課税の問題が残ります。
2. 自己株式の取得価格(株価)の決め方|個人株主からは所得税の時価が目安
個人株主から自己株式を取得する価格は、所得税基本通達59-6の時価を目安に決め、少なくとも時価の2分の1未満にしないのが基本です。非上場株式には市場価格がないため価格は当事者が決めますが、時価から大きく離れると、売った人や残った株主に課税が生じることがあります。
個人株主から買う場合の時価|所得税基本通達59-6
所得税基本通達59-6の時価は、最近の適正な売買実例などがあればその価額により、ない場合は財産評価基本通達(相続税・贈与税で自社株を評価するルール)の方法を4つの点で修正して求めます。特に、売る人が中心的な同族株主(=同族株主のうち、本人と配偶者・親子・兄弟姉妹などで議決権の25%以上を持つ人)なら会社を「小会社」(=評価上の会社区分で最も小さい区分。純資産価額を重く見る評価になる)として評価し、会社が持つ土地や上場株式は譲渡の時の時価で評価し、法人税額等相当額(=含み益にかかる法人税等に相当する額として、純資産価額から差し引く額)を差し引かないため、オーナー一族の株主から買い取るときは、相続税評価額より高くなることが多い点に注意します。一方、株主の区分は売る人の譲渡直前の議決権で判定するため、売る人が同族株主以外の少数株主であれば、配当還元価額(=配当の額をもとに計算する、低めになりやすい価額)が時価の基準になる場合があります。
4つの修正の詳しい内容と、個人が法人に株を売るときの価格の決め方・課税は、次の記事で計算例つきで解説しています。
参考記事:自社株は個人と資産管理会社のどちらで持つ?IPO・M&A前に移すメリットと、売る価格・税金(所得税法59条のみなし譲渡)
参考記事:配当還元方式とは?使える株主の判定と計算式・計算例|従業員持株会・少数株主との売買での注意点
時価より低すぎる価格で買い取ると|売った人と残った株主の課税
価格を低くしすぎた場合に問題になるのは、次の2つです。
• 売った個人株主:法人に対して時価の2分の1未満の価格で売ると、時価で売ったものとみなされ、時価からみなし配当の額を差し引いた金額が譲渡所得の収入金額になります(所得税法59条1項2号・同法施行令169条)。実際には受け取っていない金額にも課税される点に注意が必要です。また、同族会社への売却では、時価の2分の1以上でも、行為計算の否認(=同族会社との取引で税負担を不当に減らすものを、税務署が引き直して課税すること。所得税法157条)により時価で計算される場合があります(所得税基本通達59-3)。
• 残った株主:同族会社が時価より著しく低い価格で株を買い取ると、残った株主の株の価値が上がり、その部分を売った人から贈与で受けたものとみなされるおそれがあります(相続税法9条)。この扱いは、同族会社に時価より著しく低い価額で財産を譲渡した場合として、相続税法基本通達9-2(4)に示されています。この「著しく低い」は、所得税の「2分の1未満」とは別の基準で判断されます。
時価より高すぎる価格で買い取ると
反対に、時価を大きく上回る価格で買い取ると、時価を超える部分について、売った人の側では役員給与などの別の所得とされるおそれ、会社の側では課税関係の問題、同族会社では残った株主から売った人への贈与とみなされるおそれ(相続税法9条)が考えられます。実務では、株価算定書で時価を確認し、その範囲で価格を決めて根拠を残しておくのが基本です。
売る人ごとの税務上の時価の算定と、買取価格の根拠づくりは、プラストの株価算定・企業価値評価でご支援しています。
3. 自己株式を会社に売った株主の税金|みなし配当と譲渡所得
株主が会社に株を売ると、受け取った代金は「みなし配当」と「譲渡所得」の2つに分かれて課税されます。株主どうしの売買であればすべて譲渡所得になるのに対し、会社への売却では一部が配当とみなされる点が最大の違いです。
分ける基準になるのは「資本金等の額」(=登記上の資本金に、株主が払い込んだ資本準備金などを加えた税務上の金額。法人税法2条16号)です。
| 区分 | 計算 | 個人株主の課税 |
|---|---|---|
| みなし配当 | 受け取った代金 − 資本金等の額のうちその株式に対応する部分 | 配当所得として総合課税(ほかの所得と合算。配当控除=配当所得について税額から差し引ける控除あり)。支払の際に20.42%を源泉徴収 |
| 譲渡所得 | 資本金等の額のうちその株式に対応する部分 − 取得費 | 株式等の譲渡所得として申告分離課税(=ほかの所得と分けて一定の税率で計算する方法。所得税15.315%・住民税5%) |
みなし配当は所得税法25条1項5号、残りを株式等の譲渡の収入金額とする扱いは租税特別措置法37条の10第3項5号で定められています。取得費が資本金等の額の対応部分より大きく譲渡損が出た場合、その損失は同じ年のほかの一般株式等(非上場株式など)の譲渡益とは通算できますが、通算しきれない損失は生じなかったものとみなされ、みなし配当などほかの所得とは相殺できません(同条1項)。高い価格で買い集めた株を売る人は注意が必要です。
計算例|100株を1株5万円で会社に売った場合
前提:資本金等の額1,000万円、発行済株式1,000株(自己株式なし)の会社が、個人株主Aさんから100株を1株5万円で買い取る(Aさんは設立時に1株1万円で出資)。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| ① 買取代金 | 5万円×100株 | 500万円 |
| ② 1株当たりの資本金等の額 | 1,000万円÷1,000株 | 1万円 |
| ③ 資本金等の額のうち対応部分 | 1万円×100株 | 100万円 |
| ④ みなし配当 | ①500万円−③100万円 | 400万円 |
| ⑤ 源泉徴収税額 | ④400万円×20.42% | 81万6,800円 |
| ⑥ 支払時の手取り | ①500万円−⑤81万6,800円 | 418万3,200円 |
| ⑦ 譲渡所得 | ③100万円−取得費100万円 | 0円 |
Aさんは、みなし配当400万円をほかの所得と合わせて確定申告し、源泉徴収された81万6,800円を差し引いて精算します。源泉徴収は所得税だけで、住民税は確定申告の後に、ほかの所得と合わせて別途課税されます。20.42%は所得税20%と復興特別所得税です。2027年分以後は復興特別所得税1.1%と防衛特別所得税1%に組み替えられますが、合計の税率は変わりません(国税庁タックスアンサーNo.1330)。
個人に売った場合との比較|所得の多い人ほど差が開く
みなし配当はほかの所得と合算され、累進税率(所得が多いほど税率が上がる仕組み)で課税されます。配当控除はありますが、所得の多い人では、譲渡所得(20.315%)で課税される個人への売却より、税負担が重くなることが多くなります。計算例のAさんが、みなし配当を加える前の課税所得がすでに2,000万円ある人だった場合で比べます。
| 項目 | 会社に売った場合(みなし配当400万円) | 個人に同じ価格で売った場合(譲渡所得400万円) |
|---|---|---|
| 所得税(復興特別所得税を含む) | 400万円×(税率40%−配当控除5%)×1.021=142万9,400円 | 400万円×15.315%=61万2,600円 |
| 住民税 | 400万円×(10%−配当控除1.4%)=34万4,000円 | 400万円×5%=20万円 |
| 合計 | 177万3,400円 | 81万2,600円 |
この例では、会社に売るほうが約96万円多く税金がかかります(所得税法89条・92条、地方税法附則5条。配当控除は課税所得1,000万円を超える部分の率)。一方、ほかの所得が少ない人は、配当控除により個人に売るより軽くなる場合もあります。また、個人に売る場合は価格の物差しや買う人の資金が変わるため、同じ価格で売れるとは限りません。
※計算は所得控除などを単純化した概算です。
法人株主が売る場合
株主が法人の場合も、みなし配当が生じます(法人税法24条1項5号)。みなし配当は受取配当等の益金不算入(=税務上の収入に含めないこと。法人税法23条)の対象になり、持株割合に応じて一部または全部が課税されません。ただし、自己株式として取得されることが予定されている株式を取得し、その後に会社へ売った場合は、益金不算入が適用されません(同条3項)。みなし配当以外の部分では譲渡損益が生じ、グループ会社間では別の特則もあります。グループ会社間の取引も含めて、税負担を比べたうえで進め方を検討するのがおすすめです。なお、持株割合が3分の1を超える法人株主などに支払う場合は、源泉徴収が不要とされています(所得税法177条)。
相続した株を会社に売る場合の特例|租税特別措置法9条の7
相続で取得した非上場株式を会社に売る場合は、次の要件を満たせば、みなし配当とせず、受け取った代金の全額を譲渡所得(所得税15.315%・住民税5%)として扱えます(租税特別措置法9条の7)。
• 相続または遺贈で財産を取得し、納付すべき相続税額がある個人であること
• 相続税の課税価格に算入された非上場株式を、相続の開始があった日の翌日から、相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までに、その発行会社に譲渡すること
• 株主は譲渡する時までに所定の届出書を発行会社に提出し、発行会社は譲り受けた年の翌年1月31日までに、譲受けの内容を記載した書類とあわせて所轄税務署長に提出すること(同法施行令5条の2)
この特例は、支払った相続税額の一部を取得費に加える特例(租税特別措置法39条)と併用できます(国税庁タックスアンサーNo.1477)。相続税の納税資金を会社からの買取りで準備する場合は、期限内に届出書を出すことが大前提です。
4. 自己株式の取得の手続き|財源規制・他の株主への通知・株主総会の特別決議
非上場会社が特定の株主から自己株式を取得するには、分配可能額(=配当や自己株式の取得に使える上限額)の範囲内かを確認し、他の株主に通知したうえで、株主総会の特別決議で取得の枠を決める必要があるとされています。会社法で定められている主な流れは、次のとおりです。
| 手順 | 主な内容 | 会社法 |
|---|---|---|
| ① 財源の確認 | 買取代金の総額が、取得の効力が生じる日の分配可能額の範囲内かを確認する(財源規制=分配可能額を超えて買い取れないルール) | 461条1項 |
| ② 他の株主への通知 | 原則として総会の2週間前までに(招集通知の期間が2週間より短い会社では、招集通知を発すべき時までに)、他の株主へ「自分も売主に加えるよう請求できる」ことを通知する。請求の期限は原則として総会の5日前(同様の会社では3日前) | 160条2項・3項、会社法施行規則28条・29条 |
| ③ 株主総会の特別決議 | 取得する株式の数、交付する金銭等の内容と総額、取得できる期間(1年以内)、特定の株主から取得する旨を決める。売る株主本人は、原則としてこの決議で議決権を行使できない | 156条1項・160条1項・4項・309条2項2号 |
| ④ 取得価格等の決定・取得 | 総会で決めた範囲で、1株当たりの取得価格などを決めて取得する | 157条〜159条 |
相続人などから、相続で取得した株式を買い取る場合は、②の売主追加の請求の規定が適用されない扱いがあります(162条。公開会社の場合や、相続人がその株式について議決権を行使した場合を除く)。また、定款で売主追加の請求の規定を外すこともでき(164条。株式の発行後に定めるには株主全員の同意が必要とされています)、譲渡制限株式については、定款に定めがあれば相続人などに株式を会社に売り渡すよう請求する制度もあります(174条)。
分配可能額を超えて買い取った場合は、代金を受け取った株主と、職務を行った取締役などが、会社に対して連帯して代金相当額を支払う義務を負うとされています(462条1項)。また、買取りの時点では範囲内でも、その期の決算で欠損が出た場合に取締役などが責任を負う規定もあります(465条)。直近の決算書をもとに、その後の配当や自己株式の取得なども反映して、取得の効力が生じる日の分配可能額を確認しておくことが大切です。会社法の手続きは会社の状況や定款によって変わるため、実際の手続きは個別に確認してください。
5. 自己株式の取得の仕訳|会計処理・源泉徴収・税務(別表五(一))
自己株式を取得したときは、支払総額を「自己株式」として純資産から差し引き、みなし配当の源泉所得税は「預り金」で差し引いて翌月10日までに納付します。3章の計算例(Aさんから100株を500万円で買い取り)で見てみます。
会計の仕訳
| 時点 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 買取代金の支払時 | 自己株式 5,000,000 | 現金預金 4,183,200 預り金 816,800 |
| 源泉所得税の納付時 | 預り金 816,800 | 現金預金 816,800 |
| 相続した株の特例(租税特別措置法9条の7)を使う場合の支払時 | 自己株式 5,000,000 | 現金預金 5,000,000(みなし配当とされないため源泉徴収は不要) |
| 取得した自己株式を消却した時 | その他資本剰余金 5,000,000 | 自己株式 5,000,000 |
自己株式を消却したときは、消却する自己株式の帳簿価額をその他資本剰余金から減らします。その結果、期末にその他資本剰余金がマイナスになる場合は、その他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減らします(企業会計基準第1号11項・12項)。
自己株式は資産ではなく、貸借対照表の純資産の部から差し引く形で表示します。株価算定の報酬など取得に付随する費用は、自己株式に含めず営業外費用とします(企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」)。源泉徴収した所得税は、支払った月の翌月10日までに納付します(所得税法181条1項。配当は納期の特例の対象外です)。あわせて、支払の確定した日から1か月以内に、配当等の支払調書を提出します(所得税法225条1項2号)。
税務の処理
自己株式の取得は、法人税法上は資本等取引(=資本金等の額を増減させる取引)とされ、損金にも益金にもなりません(法人税法22条5項)。税務上は、3章の③の金額(取得資本金額)100万円だけ資本金等の額を減らし(同法施行令8条1項20号)、みなし配当に当たる400万円は利益積立金額(=税務上の内部留保)を減らします(同法施行令9条14号)。法人税申告書の別表五(一)(=利益積立金額と資本金等の額の明細)で、この減少を記載します。
6. 自己株式の取得を検討するときのチェックポイント
実行前に、次の6点を確認しておきます。
| 確認すること | 理由 |
|---|---|
| 売る人の譲渡直前の議決権 | 所得税の時価の計算方法(原則的評価=会社の規模や資産をもとにした評価か、配当還元価額か)が変わる |
| 買取価格と時価の差 | 所得税の低額譲渡(=時価の2分の1未満での譲渡)と、同族会社での残った株主へのみなし贈与(別の基準)の論点が生じる |
| 売る人のほかの所得 | みなし配当は総合課税のため、所得が多いほど税負担が重くなりやすい |
| 相続で取得した株か | 期限内・届出書の提出で、みなし配当にしない特例が使える(会社は届出書を翌年1月31日までに提出) |
| 分配可能額 | 超えると、売った株主と取締役などに支払義務が生じるとされている |
| 他の株主への通知と株主総会 | 原則として総会の2週間前までの通知と特別決議が必要とされ、売る株主は原則として議決権を行使できない |
会社に売るより、後継者など個人に売るほうが売る人の税負担が軽くなる場合もあります。ただし、買う人に資金が必要で、価格の物差しも変わります。どちらが良いかは、売る人・会社・残る株主の全体で比べることが大切です。
参考記事:株式譲渡(会社売却・M&A)の税金はいくら?オーナーの手取りを計算例で比較|役員退職金・事業譲渡・2027年からのミニマムタックス
7. まとめ|自己株式の取得は「価格・税金・手続き」を同時に決める
株主からの株の買取り、その価格で、売る人の税負担と残った株主の課税まで確かめていますか?自己株式の取得は、会社が買い取るというだけで、売る人の税金の種類が変わり、時価の物差しも相続税評価とは違うものになります。
次のどれかに当てはまるなら、一度確認しておくべきです。
• 退職した役員や親族など、少数株主の株を会社で買い取る予定がある
• 相続した自社株を会社に買い取ってもらい、相続税の納税資金にしたい
• 従業員持株会の会員の退会や、持株会の解散で株を引き取る予定がある
• 買取価格を、相続税評価額や額面で決めようとしている
自己株式の取得・株価算定でお悩みなら、プラスト税理士法人へご相談ください
こんな経営者様はご相談ください。
• 売る人ごとに税務上の時価を算定し、買取価格の根拠を残したい
• 会社に売る場合と個人に売る場合で、売る人の税負担と会社の負担を比べたい
• 相続した株の買取りを、特例の期限と届出を含めて進めたい
プラスト税理士法人は、株価算定から、株式の買取り・集約のスキーム検討、源泉徴収や申告の実務までを一貫して支援しています。初回のご相談は無料です。
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よくある質問
●自己株式の取得とは何ですか?
会社が自ら発行した株式を株主から買い取ることで、自社株買いや金庫株とも呼ばれます。非上場会社では、特定の株主と相対で買い取るのが一般的です。会社が持つ自己株式には議決権がないため、買取り後は残った株主の議決権の割合が上がります。
●非上場会社が自己株式を買い取る価格は、どう決めればよいですか?
個人株主からなら、所得税基本通達59-6の時価が目安です。最近の適正な売買実例などがあればその価額により、ない場合は財産評価基本通達の方法を基本に、売る人の譲渡直前の議決権で株主を判定し、中心的な同族株主なら小会社として評価する、土地等や上場株式は時価で評価する、法人税額等相当額を差し引かない、という4つの修正をして求めます。時価の2分の1未満で買い取ると、売った人は時価で売ったものとみなされます(所得税法59条1項2号)。
●自社株を発行会社に売ったとき(自己株式の取得に応じたとき)の税金は?
受け取った代金のうち、資本金等の額のうちその株式に対応する部分を超える部分はみなし配当として配当所得になり、総合課税されます(所得税法25条1項5号)。会社は支払の際に20.42%を源泉徴収します。残りの部分は株式等の譲渡所得として、取得費を差し引いて所得税15.315%・住民税5%で課税されます(租税特別措置法37条の10第3項5号)。
●自社株は、会社に売るのと後継者など個人に売るのとでは、どちらが税金は軽いですか?
売る人のほかの所得によって変わります。会社に売るとみなし配当として総合課税されるため、所得が多い人は個人に売る(譲渡所得20.315%)より重くなりやすく、課税所得2,000万円の人が400万円のみなし配当を受ける計算例では、約96万円の差になります。ほかの所得が少ない人は、配当控除により会社に売るほうが軽くなる場合もあります。
●相続した株を会社に売ると、税金は変わりますか?
納付すべき相続税額がある人が、相続した非上場株式を相続税の申告期限の翌日以後3年以内に発行会社へ売る場合は、譲渡する時までに届出書を出せば、みなし配当とせず全額を譲渡所得として扱えます(租税特別措置法9条の7)。相続税額の一部を取得費に加える特例(同法39条)とも併用できます。
●自己株式を取得したときの仕訳は?
買取代金の全額を「自己株式」として計上し、みなし配当に対する源泉所得税は「預り金」として差し引いて支払います。例えば500万円で買い取り、みなし配当が400万円なら、自己株式500万円/現金預金418万3,200円・預り金81万6,800円です。源泉所得税は翌月10日までに納付します。
●自己株式の取得に株主総会の決議は必要ですか?
会社法では、株主総会で取得する株式の数や金銭等の総額、取得期間を決めるとされ、特定の株主から取得する場合は特別決議とされています(会社法156条・160条・309条2項2号)。売る株主本人は原則としてその決議で議決権を行使できず、他の株主には売主に加わるよう請求する権利があります。相続人などから相続で取得した株式を買い取る場合は、一定の場合を除きこの請求の規定が適用されません(同法162条)。
●自己株式を取得したら登記は必要ですか?
自己株式を取得しただけでは発行済株式の総数は変わらないため、登記は通常不要と思われます。取得した自己株式を消却した場合は、発行済株式の総数が減るため、変更の登記が必要になると思われます(会社法178条・911条3項9号)。
【主な根拠資料】所得税法25条1項5号・59条1項2号・89条・92条・157条・177条・181条1項・182条2号・225条1項2号、同法施行令169条/所得税基本通達59-3・59-6(国税庁)/所得税基本通達23〜35共-9(国税庁)/租税特別措置法9条の7・37条の10第1項・第3項5号・39条、同法施行令5条の2/国税庁タックスアンサーNo.1477「相続により取得した非上場株式をその発行会社に譲渡した場合の課税の特例」/国税庁タックスアンサーNo.1330「配当金を受け取ったとき(配当所得)」/東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法/我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法/地方税法附則5条/法人税法2条16号・22条5項・23条1項・3項・24条1項5号、同法施行令8条1項20号・9条14号/相続税法9条、相続税法基本通達9-2(国税庁)/財産評価基本通達178〜189-7/会社法155条〜160条・162条・164条・174条・178条・309条2項2号・461条1項・462条1項・465条・911条3項9号、会社法施行規則28条・29条/企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」11項・12項
※計算例の金額は説明のための仮の数字です。
※本記事は2026年11月6日時点の法令・通達に基づく一般的な解説です。
※ 最終判断は担当税理士が行ってください。個別の事案への適用は、担当税理士にご確認ください。
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