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株式譲渡(会社売却・M&A)の税金はいくら?オーナーの手取りを計算例で比較|役員退職金・事業譲渡・2027年からのミニマムタックス

公開日 更新日 事業承継・相続法人税務
会社売却(M&A)の株式譲渡でオーナーにかかる税金と手取りの計算のイメージ

会社売却(M&A)でオーナーにかかる税金を、株式譲渡・役員退職金との組み合わせ・事業譲渡の3つの方法で比較|手取りの計算例、2027年からのミニマムタックス改正で変わる売却時期の考え方、持株会社が株主の場合の注意点まで

オーナー企業のM&A・事業承継と、仲介会社を使わないM&Aの支援(シャドーFA)を行い、M&A専門メディアで会社売却の税金の記事も監修しているプラスト税理士法人です。

「会社を売ったら、手元にいくら残るの?」
「株を売るのと、退職金をもらうのと、どちらが得?」

M&Aの検討を始めたオーナー経営者から、最初にいただくご質問です。結論から言うと、個人が株式譲渡で会社を売ったときの税金は、売却益×20.315%です。そのうえで、税理士法人として忖度なしでお伝えすると、会社売却の手取りは、売却価格だけでなく「どの方法で、どんな組み合わせで、いつ売るか」で数千万円単位で変わります。特に、2027年分からは、高額の所得にかかる「ミニマムタックス」が強化されるため、売却額が大きい場合は時期の判断も欠かせません。

本記事では、会社の売却を考えているオーナー経営者に向けて、株式譲渡の税金の基本から、役員退職金と組み合わせた場合・事業譲渡の場合の違い、手取りの計算例、2027年からの改正、持株会社が株主の場合の注意点までを解説します。仲介会社や買い手と条件を詰める前に、ぜひ最後までご覧ください。

この記事の結論(2026年10月20日時点の法令に基づく)
• 個人が会社の株式を売ったときの税金は、(売却価格−取得費等)×20.315%です(所得税15%・復興特別所得税・住民税5%。2027年以後も合計は同じ)。
• 役員退職金を組み合わせると、退職所得の計算(控除と1/2課税)が使えるため、本記事の計算例(売却価格3億円)では手取りが約408万円増えます。ただし、退職金は多ければ多いほど得というわけではありません。
• 売却益がおおむね3.3億円を超える場合、2027年分以後はミニマムタックスの追加の税金が生じ得ます。本記事の試算では、売却益約10億円で所得税だけで約9,900万円の差になります。株式の引渡しが2026年中なら、改正前のルールです。

1. 会社売却(M&A)の主な方法と、税金がかかる人

中小企業のM&Aで使われる主な方法と、税金が誰にかかるかは次のとおりです。

方法何を売るか税金がかかる人と所得税率の目安
株式譲渡オーナーが持つ会社の株式売ったオーナー個人の譲渡所得(申告分離課税)20.315%
株式譲渡+役員退職金株式と、退任時の退職金オーナー個人の譲渡所得と退職所得退職所得は控除と1/2課税のあと、累進税率(最高で約56%)
事業譲渡(+会社の清算)会社が持つ事業(資産・取引先など)まず会社に法人税等。清算して株主に分配すると、株主にみなし配当(総合課税)会社と株主の二段階で課税

オーナー個人の手取りを最大にする観点では、株式譲渡(必要に応じて役員退職金と組み合わせる)が基本になります。事業譲渡は、一部の事業だけを売りたい、簿外債務(=帳簿に載っていない負債)を引き継ぎたくないといった買い手側の事情で選ばれることが多い方法です。

2. 非上場株式の譲渡の税金|(売却価格−取得費)×20.315%

個人が非上場株式を売った場合の利益(譲渡所得)は、ほかの所得と分けて税金を計算する申告分離課税です(租税特別措置法37条の10)。

税金 =(売却価格 −(取得費 + 売却にかかった手数料等))× 20.315%
• 内訳:所得税15%、復興特別所得税(所得税額の2.1%)、住民税5%
• 2027年分以後は、防衛特別所得税(所得税額の1%)が新設される一方、復興特別所得税が1.1%に下がるため、合計の20.315%は変わりません(令和8年度税制改正)
• 売却の翌年に確定申告をして納めます。翌年度の国民健康保険料の計算にも、この所得が含まれます(国民健康保険法施行令29条の7)

取得費が分からない場合は「売却価格の5%」

創業時の出資額などの取得費が分からない場合は、売却価格の5%を取得費とすることが認められています(租税特別措置法関係通達37の10・37の11共-13)。実際の取得費が5%より少ない場合も、5%を使えます。創業者が資本金を出して設立した会社なら、その出資額が取得費になるのが一般的です。昔の増資の払込みや、親族から買い取った株式がある場合は、当時の資料を早めに探しておきましょう。

当法人の代表 込山(税理士)が監修した外部の記事では、会社売却の税金で確認すべき4つの注意点を整理しています。本記事は、手取りの数値比較と2027年の改正に絞って解説します。
関連記事(外部):会社売却の実務:税金で損をしないために確認すべき注意点4選(M&Aマガジン/監修:込山 大介)

3. 計算例|売却価格3億円で、株式譲渡だけと役員退職金の併用を比較

次の前提で、株式譲渡だけの場合と、役員退職金を組み合わせた場合を比べます。

• オーナーが株式を100%保有。売却価格(株式の価値)は3億円、取得費は1,000万円(設立時の出資)
• オーナーは役員を30年務め、売却に合わせて退任する
• 退職金を払う場合、払った分だけ株式の価格が下がるものとする(会社の法人税が減る効果は考えない、厳しめの前提)
• ほかの所得はないものとし、売却にかかった手数料・所得控除は考えない

項目A:株式譲渡だけB:退職金5,000万円+株式譲渡
株式の売却価格3億円2億5,000万円
株式の税金(20.315%)(3億円−1,000万円)×20.315%=58,913,500円(2億5,000万円−1,000万円)×20.315%=48,756,000円
退職金―5,000万円
退職金の税金―6,078,019円(下の計算)
税金の合計58,913,500円54,834,019円
手取り241,086,500円245,165,981円(Aより約408万円多い)

Bの退職金の税金の計算(所得税法30条)
• 退職所得控除額:勤続30年 → 800万円+70万円×(30年−20年)=1,500万円
• 退職所得:(5,000万円−1,500万円)×1/2=1,750万円
• 所得税:1,750万円×33%−153万6,000円=423万9,000円、復興特別所得税を加えて423万9,000円×1.021=4,328,019円
• 住民税:1,750万円×10%=1,750,000円
• 合計:6,078,019円(退職金に対して約12.2%)

退職金にかかる税金は約12.2%で、株式の20.315%より低いため、手取りが増えます。さらに、退職金は会社の損金(=税務上の経費)になり会社の法人税が減るため、その分を売却価格に反映できれば、差はもっと広がります。

注意:退職金は多ければ得、ではない

退職所得は1/2にしたあとで累進税率がかかるため、金額が大きくなると負担率も上がります。同じ前提で退職金を2億円にすると、退職所得は(2億円−1,500万円)×1/2=9,250万円、税金は所得税等3,760万2,409円と住民税925万円の合計4,685万2,409円で、退職金に対して約23.4%になり、株式の20.315%を上回ります。
また、法人側では、退職金のうち「不相当に高額な部分」は損金にならず(法人税法34条2項、同法施行令70条2号)、役員として会社に残る場合は、実質的に退職したといえる事情(常勤から非常勤への変更、報酬のおおむね50%以上の減額など。代表権があるなど、経営上主要な地位に残る場合は除かれます)が必要です(法人税基本通達9-2-32)。退職金の額は、手取りと損金算入の両面から試算して決めるのが現実的です。

4. 2027年からのミニマムタックス改正|売却額が大きいなら時期に注意

所得が極めて高い人には、通常の税金に加えて「ミニマムタックス」(極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置)がかかることがあります(租税特別措置法41条の19)。計算のもとになる所得の合計(基準所得金額)には、株式の譲渡所得や退職所得も含まれます。令和8年度税制改正で、2027年分(令和9年分)以後の内容が大きく強化されました。

項目2026年分まで2027年分以後
追加で納める税金の計算(基準所得金額−3億3,000万円)×22.5%−通常の所得税額(基準所得金額−1億6,500万円)×30%−通常の所得税額
追加の税金が出始める目安(所得が株式の売却益だけの場合)売却益 約9.9億円超売却益 約3.3億円超

※追加の税金がプラスになる場合だけ納めます。目安は、売却益をXとして0.225×(X−3.3億円)=0.15X、0.30×(X−1.65億円)=0.15Xを解いたものです。

計算例:売却価格10億円・取得費1,000万円(売却益9.9億円)の場合
• 2026年中に売却:(9.9億円−3.3億円)×22.5%=1億4,850万円。通常の所得税(9.9億円×15%=1億4,850万円)と同じため、追加の税金は0円
• 2027年以後に売却:(9.9億円−1.65億円)×30%=2億4,750万円。通常の所得税1億4,850万円との差の9,900万円(所得税。ほかに復興特別所得税等)が追加

売却益が大きい場合、株式の引渡し(クロージング)の日が2026年中か2027年以後かで、税金が大きく変わる可能性があります(原則は引渡しの日の年の所得。契約の効力発生日の年で申告することもできます。租税特別措置法関係通達37の10・37の11共-1)。ただし、税金のためだけに条件の悪い取引を急ぐのは本末転倒です。売却価格、条件、時期をあわせて比べましょう。

5. 事業譲渡と、その後の会社の清算|二段階で課税される

事業譲渡では、売り手は会社です。会社に入った代金をオーナーが受け取るには、会社を清算して残った財産を分配するなどの手続きが必要で、会社と株主の二段階で税金がかかります。

• 会社:事業の譲渡益に法人税等がかかります。国・地方を合わせた法人実効税率は29.74%(防衛特別法人税の対象となる場合は30.64%。財務省)で、中小法人は所得800万円以下の部分の軽減税率があります(法人税法66条、租税特別措置法42条の3の2)。営業権(のれん)・建物・設備の譲渡には消費税もかかります(土地・有価証券は非課税。消費税法6条)。
• 株主:清算で受け取る財産のうち、資本金等の額(=株主が払い込んだ元手)を超える部分は「みなし配当」として配当所得になり、総合課税(=給与などとあわせて累進税率で課税する方法。最高で約56%。配当控除あり)で課税されます(所得税法25条1項4号)。

このため、オーナー個人の手取りだけを比べると、事業譲渡+清算は株式譲渡より不利になるのが一般的です。事業譲渡を求められた場合は、売却価格に二段階の税金を反映できるか、株式譲渡に切り替えられないかを、条件交渉の前に確認しておきましょう。

関連ページ:仲介を使わないM&A支援(シャドーFA)|条件交渉の前に税金を織り込む

6. 持株会社(HD)が株主の場合と、社員が株主の場合の注意点

持株会社が子会社の株式を売る場合

• 株式の売却益には法人税等がかかります(法人税法61条の2)。個人の20.315%より負担が重くなることが多い一方、売却代金を持株会社に残して、次の事業や投資に使えます。
• 売却の前に子会社から配当を受け取る方法は、完全子会社からの配当なら全額が益金不算入(=収益に含めない)になります(法人税法23条)。ただし、子会社株式簿価減額特例(同法施行令119条の3第10項)に注意が必要です。要するに「帳簿上の株価が下がる結果、売却益が増える」しくみで、50%超の支配関係(特定支配関係)にある子会社から、株式の帳簿価額の10%を超える配当を受けると、その分だけ帳簿価額が減らされます。子会社の設立時から持株会社が支配するまで、居住者や国内の会社が90%以上を保有し続けていた場合、支配から10年超、同じ事業年度の配当の合計が2,000万円以下、支配後に増えた利益剰余金の範囲内の配当、などは適用除外です。事前の配当は、この特例の判定まで含めて試算する必要があります。

参考記事:【ホールディングス化】持株会社の株価対策はもう使えない?評価見直し案で変わる4つのポイントと、いまやるべきこと

従業員持株会やストックオプションを持つ社員がいる場合

• 民法上の組合(=契約で作る任意の団体)である従業員持株会を通じて株を持つ会員は、持分に応じて株式の譲渡所得として課税されると考えられます(所得税基本通達36・37共-19)。
• 税制適格ストックオプションは、権利を行使して得た株式を売ったときに譲渡所得として課税されます(租税特別措置法29条の2)。非適格の場合は、行使したときに給与所得等として課税されます。
M&Aの契約では、持株会やストックオプションの扱い(買い取るのか、行使して売るのか)も決める必要があります。社員の手取りと税金にも関わるため、早めに整理しておきましょう。

参考記事:ストックオプションの税金はいつ・いくら?税制非適格だと最大約55%の給与課税になる5つの失敗
関連ページ:非上場会社の従業員持株会の設立・事務局業務の支援
参考記事:【税制適格ストックオプション】導入の流れと権利行使価額(株価)の決め方|VCから優先株で調達した後でも慌てないために

7. 売却の前にオーナーが準備しておきたいこと

準備内容
① 株式の取得費の資料設立時・増資時の払込みの記録、親族などから株式を買った際の契約書
② 株主構成の整理名義株(=名義だけ他人になっている株)や少数株主、持株会・ストックオプションの有無を確認し、売却に必要な株式を集められるか
③ 手取りの試算株式譲渡だけ/退職金との組み合わせ/事業譲渡を、売却時期(2026年中か2027年以後か)も含めて比べる
④ 退職金の水準勤続年数・報酬・同業他社の水準から、損金算入できる範囲を確認する
⑤ 会社の株価の目安買い手がつける価格の目安(企業価値)と、税務上の株価を把握しておく

税務上の株価のルールは、いま国税庁で見直しが進んでいます。
参考記事:非上場株式(自社株)の評価の改正・見直しはどうなる?類似業種比準方式の廃止案と残余利益方式|国税庁 有識者会議・第6回までの要点

8. まとめ|会社売却の税金は「方法・組み合わせ・時期」で変わる

その会社売却、手取りが最大になる組み立てで条件を決めていますか?同じ売却価格でも、株式譲渡だけにするか、退職金と組み合わせるか、いつ売るかで、手元に残る金額は大きく変わります。

次のどれかに当てはまるなら、条件を決める前に一度試算しておくべきです。
• 売却価格の提示はあるが、税金を引いた手取りを計算していない
• 退職金を出すかどうか、いくらにするかを決めていない
• 売却益が約3.3億円を超える見込みで、2027年以後のクロージングを予定している
• 持株会社が株主になっている、または社員が株を持っている

会社売却・M&Aの税金でお悩みなら、プラスト税理士法人へご相談ください

こんな経営者様はご相談ください。
• 売却方法・退職金・時期の組み合わせごとに、手取りを比べたい
• 仲介会社を使わず、買い手と直接進めたい(シャドーFA)
• 売却前の株価の把握や、株主構成の整理から始めたい

プラスト税理士法人は、M&Aのスキームと税金の試算、株価算定、仲介会社を使わないM&Aの支援(シャドーFA)、売却後の資産管理会社の運営まで、オーナー経営者を一貫して支援しています。初回のご相談は無料です。

よくある質問

●株式譲渡で会社を売ったときの税金の税率は何%ですか?
個人が非上場株式を売った場合、売却益(売却価格−取得費等)に対して20.315%(所得税15%、復興特別所得税、住民税5%)です(租税特別措置法37条の10)。2027年分以後は防衛特別所得税が新設されますが、復興特別所得税が下がるため、合計の20.315%は変わりません。

●会社を売るとき、役員退職金をもらったほうが得ですか?
退職所得は、退職所得控除を引いたあとの金額の1/2に課税されるため、適切な金額なら株式譲渡より税負担が軽くなることがあります。本記事の例(売却価格3億円、勤続30年、退職金5,000万円)では手取りが約408万円増えます。ただし金額が大きくなると負担率が上がり、退職金2億円では約23.4%と株式の20.315%を上回ります。法人側で不相当に高額な部分は損金になりません。

●株式の取得費が分からない場合はどうなりますか?
売却価格の5%を取得費として計算することが認められています(租税特別措置法関係通達37の10・37の11共-13)。実際の取得費が分かる場合は、その金額を使えます。

●ミニマムタックスは、会社の売却に関係しますか?
株式の売却益や退職所得も計算に含まれるため、売却額が大きい場合は関係します。2027年分以後は控除額が1億6,500万円、税率が30%に強化され、所得が株式の売却益だけの場合、売却益がおおむね3.3億円を超えると追加の税金が生じ得ます(租税特別措置法41条の19、令和8年度税制改正)。

●事業譲渡と株式譲渡では、どちらがオーナーの手取りが多いですか?
一般的には株式譲渡です。事業譲渡では、まず会社の譲渡益に法人税等がかかり、さらに会社を清算して分配を受けると、株主にみなし配当として総合課税がかかるため、二段階で課税されます。

【主な根拠法令等】所得税法25条1項4号・30条・33条・92条/所得税基本通達36・37共-19/租税特別措置法29条の2・37条の10・41条の19・42条の3の2/租税特別措置法関係通達37の10・37の11共-13/法人税法23条・34条2項・61条の2・66条、同法施行令70条2号・119条の3第10項、法人税基本通達9-2-32/消費税法6条/国民健康保険法施行令29条の7/東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法13条/国税庁タックスアンサーNo.1463「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」/同No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」/同No.2270「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」/財務省「令和8年度税制改正の大綱」/財務省「法人課税に関する基本的な資料」
※計算例は説明のための仮の数字で、所得控除・手数料・地方税の細かな差は考慮していません。
※本記事は2026年10月20日時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の事案への適用・最終判断は、担当税理士にご確認ください。

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