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【資本政策】資本政策表の作り方と持株比率の計算例|創業時に避けたい3つの株の持ち方

公開日 更新日 スタートアップ法人税務
資本政策表の作り方と、シードからシリーズBまでの持株比率・希薄化の計算例をスタートアップ向けに解説

資本政策表の作り方と持株比率・希薄化の計算をシード〜シリーズBの数値例で整理|創業時の株の分け方と退任時の扱いも解説

スタートアップの資本政策と株価算定を支援しているプラスト税理士法人です。

「VCとの面談で『資本政策表を見せてください』と言われたけど、何をどう書けばいいの?」
「共同創業者とは対等な関係だから、株も半分ずつでいいよね?」

税理士法人として忖度なしでお伝えすると、資本政策で後から取り返しがつかなくなる失敗は、資金調達の場面ではなく、その前の「創業時の株の持ち方」で起きることが少なくありません。本記事では、これから資金調達をするシード〜シリーズAの経営者に向けて、資本政策表の作り方と持株比率の推移を数値例で示し、創業時に避けたい株の持ち方を解説します。ぜひ最後までご覧ください。

この記事の結論
• 資本政策とは、「いつ・誰に・いくらで・何株を渡すか」を、資金調達・持株比率・Exit(=株式の売却・上場)を一体にして決める計画です。資本政策表は、それをラウンドごとの株数・発行価格・持株比率で表にしたものです。
• 発行価格は「プレマネー評価額(=増資前の株式価値)÷増資前の株式数」、新しく発行する株数は「調達額÷発行価格」で計算します。本記事の例では、代表の持株比率(完全希薄化後)は70%→38.89%まで下がります。
• 創業時に避けたいのは、①共同創業者で株を均等に分ける ②事業に関わらない知人・アドバイザーに安い価格で株を渡す ③退任時の株の扱いを決めていない、の3つです。
• まずやること:①今の株主名簿で資本政策表を作る ②代表の議決権が3分の2・過半数・3分の1を割る時点を確認する ③退任時の株の扱いを創業者間で書面にする

1. 資本政策とは?資金調達・持株比率・Exitを一体で設計する計画

資本政策とは、会社が必要な資金を調達しながら、「いつ・誰に・いくらで・何株を渡すか」を、IPOやM&AといったExitから逆算して決める計画です。

決めること具体的な内容
いつ資金調達のタイミング(シード、シリーズA、シリーズB…)
誰に創業者、投資家(VC・事業会社・エンジェル)、役員・従業員(ストックオプション)
いくらで1株あたりの発行価格(株価)と、その根拠
何株を発行する株数と、その結果の持株比率・希薄化(=新しい株の発行で既存株主の持株比率が下がること)

資本政策はやり直しがききません。会社が株主から株式を取得できる場面は会社法で限られており(会社法155条)、原則として株主との合意と会社法の手続きが必要です。増資の手続きと税金は、次の記事で解説しています。

参考記事:【第三者割当増資】スタートアップが知らないと損する手続きと税務の落とし穴5つ|資本金「1,000万円・1億円の壁」

2. 資本政策表の作り方(5ステップ)と計算式

資本政策表とは、株主ごとの株数と持株比率が、資金調達のラウンドごとにどう変わるかを一覧にした表です。次の順に作ります。

ステップ① Exitと事業計画から、必要な資金と調達の時期を決める
Exitの形と時期を仮置きし、「いつ・いくら足りなくなるか」を逆算します。

ステップ② 現在の株主と「潜在株式」を書き出す
株主名簿どおりに株数を記入し、ストックオプションや転換型の新株予約権(J-KISSなど)のように将来株式に変わり得る「潜在株式」も行を分けて記入します。

ステップ③ ラウンドごとに発行価格と株数を計算する

項目計算式
発行価格(1株あたり)プレマネー評価額 ÷ 増資前の株式数(完全希薄化後)
新しく発行する株数調達額 ÷ 発行価格
ポストマネー評価額(=増資後の株式価値)プレマネー評価額 + 調達額(=発行価格 × 増資後の株式数)
各株主の持株比率その株主の株数 ÷ 増資後の株式数

ステップ④ 「議決権の比率」と「完全希薄化後の比率」の両方を出す
未行使のストックオプションには議決権がないため、「議決権の比率」(発行済株式数ベース)と「完全希薄化後(=ストックオプションがすべて株式になったと仮定した場合)の比率」の両方を計算します。

ステップ⑤ 会社法と税務の前提を確認し、ラウンドのたびに更新する
ストックオプションの目的となる株式の数は、権利行使期間が始まる時点で発行可能株式総数の空きに収まっている必要があります(会社法113条4項)。発行価格・権利行使価額の根拠もあわせて確認します。

3. 計算例|シード→シリーズA→シリーズBで創業者の持株比率はどう変わるか

次の前提で資本政策表を作ります(金額・株数は説明のための仮の数字です。すべての株式に1株1議決権があるものとします)。

時点前提
設立普通株式10,000株を1株100円で発行(資本金100万円)。代表A 7,000株(70%)、共同創業者B 3,000株(30%)
シードの前株式分割(1株を100株に)で、発行済株式を1,000,000株にする
シードプレマネー評価額4億円、調達額6,000万円。投資家には優先株式を発行
シードの後ストックオプションの枠(プール)として100,000株分を確保
シリーズAプレマネー評価額13億円(完全希薄化後ベース)、調達額2.6億円。投資家には優先株式を発行
シリーズBプレマネー評価額39億円(同)、調達額7.8億円

株式分割は株主総会(取締役会設置会社は取締役会)の決議で行います(会社法183条2項)。

シリーズAの計算
発行価格 13億円÷1,250,000株=1,040円、新株数 2.6億円÷1,040円=250,000株。増資後(完全希薄化後)1,500,000株、ポストマネー評価額 1,040円×1,500,000株=15.6億円(投資家の比率は2.6億円÷15.6億円=16.67%)。シード(400円・150,000株)とシリーズB(2,600円・300,000株)も同じ式です。

株主(完全希薄化後)設立時(分割後の株数)シード後(SO枠を含む)シリーズA後シリーズB後
代表A700,000株(70.00%)700,000株(56.00%)700,000株(46.67%)700,000株(38.89%)
共同創業者B300,000株(30.00%)300,000株(24.00%)300,000株(20.00%)300,000株(16.67%)
シード投資家-150,000株(12.00%)150,000株(10.00%)150,000株(8.33%)
ストックオプションの枠-100,000株(8.00%)100,000株(6.67%)100,000株(5.56%)
シリーズA投資家--250,000株(16.67%)250,000株(13.89%)
シリーズB投資家---300,000株(16.67%)
合計株式数1,000,000株1,250,000株1,500,000株1,800,000株
1株あたりの発行価格1円(分割後に換算)400円1,040円2,600円
調達額-6,000万円2.6億円7.8億円

議決権の比率で見ると、どこで「線」を越えるか

取締役の選任・解任などの普通決議は出席株主の議決権の過半数、定款変更などの特別決議は出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です(会社法309条1項・2項、329条1項、339条1項)。この例に当てはめると、次のとおりです。

時点(発行済株式数)代表Aの議決権比率A+Bの議決権比率読み取れること
シード後(1,150,000株)60.87%86.96%Aは単独で過半数
シリーズA後(1,400,000株)50.00%71.43%Aは単独では過半数(50%超)に届かない。A+Bなら3分の2以上
シリーズB後(1,700,000株)41.18%58.82%創業者2人を合わせても3分の2を下回る。Aは3分の1超

※ 未行使のストックオプションを除き、全株主が出席した場合の比率です。

この推移を先に見ておけば、調達額や時期の見直しを交渉の前に検討できます。各ラインの意味は前掲の第三者割当増資の記事で解説しています。

ストックオプションの枠を「増資前」に広げると、誰が負担するか

シリーズAの前に枠を50,000株分追加し、それをプレマネー評価額13億円の中に含める場合を比べます。

項目枠を追加しない(上の例)増資前に枠を50,000株追加
増資前の株式数(完全希薄化後)1,250,000株1,300,000株
発行価格13億円÷1,250,000株=1,040円13億円÷1,300,000株=1,000円
シリーズAの新株数2.6億円÷1,040円=250,000株2.6億円÷1,000円=260,000株
代表A46.67%44.87%(700,000÷1,560,000)
ストックオプションの枠6.67%9.62%(150,000÷1,560,000)
シリーズA投資家16.67%16.67%(変わらない)

増資前に枠を広げると発行価格が下がり、投資家の比率は変わらないまま、増えた枠の分だけ既存株主の比率が下がります。実際に付与するときは、その都度、株主総会の特別決議などの手続きが必要です(会社法238条・239条・309条2項6号)。権利行使価額の決め方は、次の記事で解説しています。

参考記事:【税制適格ストックオプション】導入の流れと権利行使価額(株価)の決め方|VCから優先株で調達した後でも慌てないために

4. 創業時に避けたい株の持ち方3つ

① 共同創業者で株を均等に分ける(2人で半分ずつ、3人で3分の1ずつ)
普通決議は、出席した株主の議決権の過半数で決まります(会社法309条1項)。2人で50%ずつ持つと、意見が割れたときにどちらも過半数に届かず、取締役の選任・解任(同329条1項・339条1項)や役員報酬の額(同361条1項)も決められなくなります。意思決定に責任を持つ代表が過半数(できれば3分の2以上)を持つ形を基本に検討します。後から比率を直すには株式の譲渡が必要になり、その時点の時価で課税関係を考える必要があります(5章)。

② 事業に関わらない知人・アドバイザーに、安い価格で株を渡す
条件を契約で整えて出資を受けるエンジェル投資家は別です。少数でも株主には、株主総会の招集通知や、非公開会社では1株から役員の責任追及の訴えを会社に請求できる権利などがあります(会社法299条1項・847条1項・2項)。M&Aで全株式を売却するときも、一人ひとりの同意か、議決権90%以上の株主による株式等売渡請求(同179条)などの手続きが必要です。
また、投資家より大幅に安い価格で同じ種類の株式を割り当てると、有利発行(=時価より安い発行)として引き受けた側に課税されるおそれがあります。所得の区分は原則として一時所得、発行会社の役員・従業員がその地位や職務に関連して引き受けた場合は給与所得です(所得税法施行令84条3項3号、所得税基本通達23〜35共-6(2)・23〜35共-7)。

参考記事:ストックオプションの税金はいつ・いくら?税制非適格だと最大約55%の給与課税になる5つの失敗

③ 退任時の株の扱いを決めていない(株主間契約・取得条項)
共同創業者が会社を離れても、株式を手放す義務はありません。定款の譲渡制限(会社法107条1項1号)も、第三者への譲渡に会社の承認を求める仕組みにすぎません。定款で、一定の事由が生じたら会社が株式を取得できる「取得条項」(同107条1項3号・108条1項6号)を定める方法もありますが、株式の発行後に設けるには株主全員(種類株式発行会社ではその種類の株主全員)の同意が必要です(同110条・111条1項)。そのため、株主間契約(=株主同士が株式の扱いなどを約束する契約)で定めるのが一般的です。

株主間契約で決める主な項目内容の例
退任時の株の扱い(創業者間)譲り渡す義務の有無、買い手、価格の決め方、在籍期間に応じて譲り渡す株数を減らすしくみ(ベスティング)
事前承認事項(投資家との間)増資・ストックオプションの発行・重要な契約など、実行前に投資家の承認が必要な事項
優先引受権新株を発行するときに、投資家が持株比率に応じて優先的に引き受けられる権利
先買権・共同売却権創業者が株を売るときに、投資家が優先して買い受けたり、一緒に売却に加わったりできる権利
一斉売却請求権(ドラッグ・アロング)一定の株主が会社の売却に賛成したとき、他の株主にも同じ条件での売却を求められる権利

条項の内容は、共同創業者や投資家と十分に話し合って決めましょう。関係が良好な設立の時点で決めておくことが重要です。

5. 退任した創業者の株を買い取るときの税務|「取得価額で買い戻す」の注意点

株主間契約で「退任したら取得価額で買い戻す」と決めていても、税務上の時価が取得価額より高いと、時価との差額に課税が生じることがあります。VCの株は優先株式のため、普通株式の時価は発行価格より低く算定されることがあります(例では仮に1株300円)。

3章の例で、シリーズAの後にBが退任し、300,000株を取得価額(分割後1株1円)で手放す場合です。
• 支払う対価:1円×300,000株=300,000円
• 税務上の時価:300円×300,000株=90,000,000円
• 差額:90,000,000円-300,000円=89,700,000円
※ 説明のため、買い手が個人の場合も会社の場合も同じ時価としています。実際は買い手によって算定方法が異なります。

誰が買い取るか主な課税関係根拠
残る創業者A(個人)著しく低い価額で譲り受けたとして、差額(例では8,970万円)を贈与により取得したものとみなされ、贈与税の対象になるおそれ相続税法7条
会社(自己株式の取得)・対価が時価の2分の1未満のため、Bは時価で譲渡したものとみなされるおそれ(本例は、対価〈1株1円〉が普通株式1株あたりの資本金等の額〈種類株式を発行しているため普通株式の種類資本金額100万円÷1,000,000株=1円〉を超えないため、みなし配当〈=配当として課税される部分〉は生じません。Bは時価から取得費を引いた額〈9,000万円-30万円=8,970万円〉が譲渡所得となるおそれがあります)
・同族会社では、株式の価値が増えた他の株主に贈与税の課税関係が生じることがある
所得税法59条1項2号・同法施行令169条/所得税法25条1項5号・同法施行令61条2項6号/相続税法基本通達9-2(4)
創業者の資産管理会社など別の法人差額が受贈益(=無償で受けた利益)として課税されることがある。発行会社自身が買う自己株式の取得では生じない法人税法22条2項・5項

会社が特定の株主から買い取るには株主総会の特別決議が必要で(会社法156条1項・160条1項・309条2項2号)、他の株主にも売主に加わるよう求める権利があり(同160条2項・3項)、売り手は決議に加われません(同条4項)。買取りに使える金額は分配可能額(=株主に払い出せる剰余金の上限)の範囲内に限られ(同461条1項3号)、赤字が続くスタートアップでは会社では買い取れないことが多いため、誰が買い取るかまで決めておきます。価格の決め方を定めるときと実際に買い取るときに、株価算定書などの根拠を残しておくと安心です。

弊社のサービス:株価算定・企業価値評価

6. まとめ|資本政策は「最初の株の持ち方」で決まる

あなたの会社の資本政策表は、代表の議決権がどこで3分の2・過半数・3分の1を割るかを示せていますか?共同創業者が離れるとき、その株を誰が・いくらで買い取るか決まっているでしょうか。

次のどれかに当てはまるなら、次の資金調達の前に一度見直しをおすすめします。
• 資本政策表がなく、毎回のラウンドを目の前の調達額だけで決めている
• 共同創業者と株を均等に分けている
• 事業に関わらない知人やアドバイザーが株主になっている
• 退任時の株の扱いや価格の決め方を、創業者間で取り決めていない

資本政策・資金調達でお悩みなら、プラスト税理士法人へご相談ください

こんな経営者様はご相談ください。
• はじめての資金調達の前に、資本政策表を作りたい
• 共同創業者の退任に伴う株式の買取価格を、税務上の時価を踏まえて決めたい
• 増資やSO付与のたびの資本政策表・株主名簿の更新を、月次の経理とまとめて任せたい

プラスト税理士法人は、資本政策の設計から株価算定、増資後の経理・税務までを一気通貫でご支援します。

よくある質問

●資本政策とは何ですか?
会社が必要な資金を調達しながら、いつ・誰に・いくらで・何株を渡すかを、IPOやM&AといったExitから逆算して決める計画です。

●資本政策表とは何ですか?
株主ごとの株数と持株比率が、資金調達のラウンドごとにどう変わるかを一覧にした表です。各ラウンドの発行価格は「プレマネー評価額÷増資前の株式数(完全希薄化後)」で計算します。

●共同創業者の持株比率はどう決めればよいですか?
均等に分けると、意見が割れたときに普通決議(出席株主の議決権の過半数)を誰も通せなくなるおそれがあります(会社法309条1項)。代表が過半数、できれば3分の2以上を持つ形を基本に検討します。

●株主間契約とは何ですか?定款とどう違いますか?
株主同士が、株式の譲渡や退任時の扱いなどを約束する契約で、会社法上の制度ではありません。定款に取得条項を設けて会社が株式を取得できるようにする方法もありますが、株式の発行後に設けるには株主全員(種類株式発行会社ではその種類の株主全員)の同意が必要です(会社法110条・111条1項)。

●退任した共同創業者の株を、取得価額で買い戻しても問題ありませんか?
税務上の時価が取得価額より高い場合、個人が買い取ると差額が贈与とみなされ(相続税法7条)、会社が買い取ると売り手が時価で譲渡したものとみなされる(所得税法59条1項2号)などの課税が生じることがあります。価格の決め方は、税務上の時価との関係を確認して定めます。

●ストックオプションの枠(プール)は資本政策表にどう入れますか?
未行使の分も「潜在株式」として行を分け、完全希薄化後の比率で確認します。増資前に枠を広げてプレマネー評価額に含めると、増えた枠の分は既存株主が負担します。

【主な根拠法令等】会社法107条・108条1項・110条・111条1項・113条4項・155条・156条1項・160条・179条・183条2項・238条・239条・299条1項・309条1項・2項・329条1項・339条1項・361条1項・461条1項・847条1項・2項/所得税法25条1項5号・59条1項2号/所得税法施行令61条2項6号・84条3項3号・169条/所得税基本通達23〜35共-6・23〜35共-7/相続税法7条/相続税法基本通達9-2/法人税法22条2項・5項/経済産業省「我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」(増補版、2025年9月)
※本記事は2026年10月18日時点の法令・国税庁等の公表資料に基づく一般的な解説です。計算例の金額・株数は仮のものです。個別の事案への適用・最終判断は、担当税理士にご確認ください。

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